『聖魔書』[1-3] 形成記



 第一の奇跡。

 一なる神は、創世である。

 一なる神は、世界を遡ることを許されなかった。

 一なる神は、世界を遡ることを赦された。

 許されざることと赦されたことは、世界における創世である。

 その特異点のゆらぎは、一なる神の慈愛である。

 ゆらぎは、一なる神が、零なる神であり、無限なる神であることの証である。

 この概念規定が、第一の軌跡である。



 第二の奇跡。

 一なる神は、すべての力を一つの理論に導く。

 ゆらぎから、一なる神による(ことわり)の世界が導かれる。

 この一つの理論は、一なる神が、すべての法則の支配者であることを示す。

 この法則支配が、第二の軌跡である。



 第三の奇跡。

 世界は世界そのものを超克し続ける。

 一なる神は、様々な(ことわり)を分かつ。

 一なる神は、時空である宇宙に、世界の存在理由の一つを与える。

 この多世界制御が、第三の軌跡である。



 第四の奇跡。

 一なる神は対称性の破れを支配し、宇宙に元素が誕生する。

 一なる神は、誕生した元素に異なる祝福を授けた。

 様々な祝福を受けた元素は、他の元素とともに一なる神を祝福し合唱する。

 この確率改変が、第四の軌跡である。



 第五の奇跡。

 元素の合唱は、賛美歌となる。

 賛美歌により、

 宇宙に銀河系が誕生し、

 銀河系に太陽系が誕生し、

 太陽系に地球が誕生する。

 この偏在励起が、第五の軌跡である。



 第六の奇跡

 地球は月を産み落とし、陸と海と空を生み出す

 海と月の舞により、生命の素材が作られる。

 一なる神の仕掛けにより、最初の生命が誕生する。

 この生命誕生が、第六の軌跡である。



 第七の奇跡。

 地球は寒冷化と温暖化を繰り返す。

 大陸は脈動する。

 生命は多様に変化する。

 生物は核を、多くの細胞を、骨格を持つようになる。

 動物と植物が分かれ、性が分かれ、海から陸へと進む。

 魚類が、両生類が、爬虫類が、哺乳類が、鳥類が生まれる。

 恐竜が繁栄し、巨大隕石の衝突により絶滅する。

 生き延びた哺乳類から、霊長類が生まれる。

 霊長類から、類人猿が、猿人が、原人が、旧人が、新人が生まれる。

 すなわち、人が誕生する。

 この人間原理が、第七の軌跡である。



 第八の奇跡。

 生命に対し、一なる神は神秘を授ける。

 生命において、神秘を感じるものが人間となる。

 人間は一なる神に祈る。

 この真・三位一体が、第八の軌跡である。



 第九の奇跡

 こうして万象が成った。

 あなたが一なる神を信じるとき、一なる神の奇跡は存在しない。

 あなたが一なる神を信じられないとき、一なる神の奇跡は存在する。

 この信仰矛盾が、第九の軌跡である。



 第十の奇跡

 一なる神はあなたを愛している。

 あなたは誰かを愛するだろう。

 我は汝を愛するだろう。

 特異点である真・三位一体は、特異点で無くなるだろう。

 そう見なしえる視点が生まれうるであろう。

 この心論が、第十の軌跡である。






【解説】

 今回の「形成記」は、『旧約聖書』の「創世記」冒頭の天地創造の箇所に該当します。実際に『旧約聖書』の「創世記」を読んでみると、個人的には創世しているというより形成しているというイメージでしたね。そのため『聖魔書』では、「形成」の前に「創世」と「開闢」を記すという方法を採用しました。それによって、「形成記」では創世→形成→開闢という流れが暗示される構成になっています。

 また、「創世記」の天地創造は休みも入れて七日間ですが、「形成記」では七分割ではなく十分割で論じています。しかも、休みはなしです(笑)。ブラックですね。一なる神は、どうやら働きもののようです。






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