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『2時間目 例えばジャイアニズム』

 

  思想初心者のための解説「2時間目」を始めます。
 1時間目で思想について簡単に説明しました。ここでは、一つの思想の例として、「ジャイアニズム」について考えてみます。
 ジャイアニズム(Gianism)とは、超有名作品『ドラえもん』に登場するガキ大将のジャイアンこと剛田武の思想のことです。作中のジャイアンの言動に対し、ギャグで名づけられたのがジャイアニズムという思想です。簡単に言うと、ジャイアンのセリフ「おまえのものはおれのもの、おれのものもおれのもの」という考え方のことです。作中においては、のび太という登場人物が、ジャイアニズムによって被害を受けることが多いです。
 ジャイアニズムは、エゴイズム(利己主義)とほとんど同じです。エゴイズムとは、自己の利益を重視し、他者の利益を軽視したり無視したりする考え方のことです。そのため、自分の所有権は当然のこととして主張し、他人の所有権を否定し、他人の所有権を自分の所有権として主張してしまうわけです。
 ジャイアンの母親、通称「母ちゃん」は、ジャイアンが恐れている人物です。母ちゃんは雑貨店を営んでいることもあり、息子であるジャイアンに店番をさせたりします。ジャイアンは、「俺はかーちゃんの奴隷じゃないっつーの!」というセリフを言ったりします。ジャイアニズムは、他人を奴隷化しようとしますが、自分が奴隷になるのは嫌だという、非情に自己中心的な思想なのです。
 ただ、ここで注目すべきポイントは、彼が自己中心的なことを「語る」ということです。他人へ向かって、おまえは俺の奴隷だぞ、でも、おれは自分が奴隷になるのは嫌だぞ、ということを語っているのです。相手に向かって何かを語るということは、一応は、相手が言葉の意味を理解しているということを前提にしています。言葉の意味が分かる相手に対して、自分の考えを示しているのです。ここに、思想のポイントがあります。
 つまり、思想は、自分ではない他人に「語る」ことで、相手との関係を築くという営みだということが分かります。ここ、ポイントですよ。
 例えば、何も言わずにいきなり他人の持ち物を取り上げたら、取り上げられた方は困惑します。気が触れたのか、意図的にそうしているのか分からないからです。しかし、「おまえのものはおれのもの、おれのものもおれのもの」と語ることで、俺は意図的にお前の持ち物を、俺の所有物にするぞということを相手に理解させているのです。
 ジャイアンは、ジャイアニズムを実践するために暴力を使います。自分の腕力によって、相手を屈服させることができれば、あいての持ち物を自分のものとすることに成功します。一方、母ちゃんに対しては腕力でかなわないため、店番をさせられる、つまり、奴隷化させられてしまうわけです。
 さて、ジャイアニズムは、思想として、自分の思想にするに値する思想でしょうか?
 その答えは、YESでもあり、NOでもあります。ジャイアンは、のび太に対しジャイアニズムを振るいますが、のび太はドラえもんに助けを求めます。ドラえもんは不思議な道具をのび太に授け、ジャイアンは痛い目をみます。ついでに、調子に乗ったのび太も痛い目を見てオチとなるのが、この作品の特徴です。この展開を見る限り、ジャイアニズムは成功確率の低い思想だと言えそうです。
 もちろん、現実にドラえもんはいませんが、代わりに、現実には警察や軍隊などの(暴力に対抗するための)権力機構が存在します。そのため、ジャイアニズムを実践し続けることは、非情に難しいと言えそうです。
 例えば、板垣恵介の漫画作品に登場する、範馬勇次郎というキャラ並みの暴力を有しているなら、ジャイアニズムは非情に魅力的な思想だと言えるでしょう。そこまでの暴力を持っていないなら、そう簡単にはジャイアニズムを実践することはできません。色々と工夫が必要になってくるでしょう。でも、色々と小細工を労するようになると、それはジャイアニズムとは別の思想になってしまう気がします。
 以上の考察から、本授業では、ジャイアニズムをあまりお勧めできない思想に分類することにします。

 


【補習】
 まあ、こんな説明読むよりも、『ドラえもん』を読めば分かるよ。

 

 

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