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日本式経済論:太宰春臺『経済録拾遺』の章

 太宰春臺(1680~1747)は、江戸中期の儒学者です。『経済録』の後に書かれた『経済録拾遺』から、経済についての考え方を見ていきます。

 

第一節 経済と制度
 春臺は、〈経済ノ術ハ、医師病ヲ治スルガ如シ。病ヲ治スルニ、基本ヲ求ムトイフハ大法ナレドモ、急ナレバ其標ヲ治ストイフコトアリ。経済モ亦然ナリ〉と述べています。経済を病の治療に例えています。本とは身体の気の集まる手足の部分であり、標とは気の拡散する東部・腹部のことです。身体をめぐる経脈は十二あり、すべて手足の先端から出発すると考えられていました。
続けて、〈国家ニ制度ヲ立ルハ本ナリ。制度ナクシテ、風俗敗レ、国用足ラザルヲ、是マヽニテ当前ノ急ヲ救ハントスルハ末ナリ〉とあります。経済においては制度が重要だというのです。〈制度トハ万事ノ法式ヲ定ルヲイフ〉と定義されています。
 制度については、〈然レドモ天下ノ制度ヲ改ルコトハ、一国ノ力ノ及ブ所ニ非ズ。天下ノ制度改ラズシテハ、善キ経済ハ行ハレズ〉とあります。しかしながら、続けて、〈サレバトテ、一国ハ一国ノ経済ニテ、如何様ニモナルベキ事ヲ、一向ニ棄置テ位ヅメニスルハ、智術ナキナリ。医家ニ急ナレバ其標ヲ治スト云ル如ク、今ノ病ノ急ナル所ヲ見テ、是ヲ救フベキナリ〉と語られています。まずは一国の経済を、病を治すように立て直すことが必要だというのです。

 

第二節 金銀と売買
 春臺は、〈今ノ世ハ、只金銀ノ世界ニテ、米穀ハ朝夕ノ飯食ニ充ルマデニテ足リ、布帛ハ衣服ニ充ルマデニテ足ヌ〉と考えています。衣食住が足るような時代において、金銀の役割について考察しているのです。〈今ノ世ハ、米穀布帛アリテモ、金銀乏ケレバ、世ニ立ガタシ〉というわけです。
 武士階級における金銀の在り方については、〈今ノ世ハ、禄アル士大夫モ、国君モ皆商賈ノ如ク、偏ニ金銀ニテ、万事ノ用ヲ足ス故ニ、如何ニモシテ金銀ヲ手ニ入ルヽ計ヲナス。是今ノ急務ト見ユルナリ〉とあります。続けて、〈金銀ヲ手ニ入ルヽ術ハ、売買ヨリ近キコト無シ〉と述べられています。武士階級が商売することによって、利益を得るべきことが説かれているのです。

 

第三節 国用と国富
 売買の方法についても、様々な方法が語られています。例えば、〈土産ノ出ルニ多キ有リ、寡キ有リ。土産寡キ処ハ、其民ヲ教導シ、督責(トクセキ)シテ、土地ノ宜キニ随テ、百穀ノ外、木ニテモ草ニテモ、用ニ立ツベキ物ヲ種(ウヘ)テ、土物ノ多ク出ル様ニスベシ。又国民ニ宜キ細工ヲ教テ、農業ノ暇ニ、何ニテモ人間(じんかん)ノ用ニ立ベキ物ヲ作リ出サシメテ、他国ト交易シテ、国用ヲ足スベシ。是国ヲ富ス術ナリ〉とあります。土地に合った栽培方法や、兼業などの方法が語られています。ここでいう「人間(じんかん)」は、世の中のことです。他国と交易して自国に必要なものを満たし、国の富を増進させる方法が示されています。

 

第四節 物産と物流
 国富の方法の一つとして、〈今ノ経済ニハ、領主ヨリ金ヲ出シテ、国ノ土産、諸ノ貨物ヲ、コトゴトク買取テ、其処ニテ買フモノアラバ売ルベシ。然ラズハ、船ニ載セ馬ニ駄シテ、江戸・京・大坂ニ運(ハコビ)テ売ベシ〉という意見があります。領主が物流を管理する方法です。その理由については、〈今若其国主ヨリ金ヲ出シテ、其国ノ土産貨物ヲコトゴトク買取ンニ、民ノ居ナガラ他所ノ商人ニ売ルト、他所ニ旅行シテ、行家ニ就テ売ルト、両様ノ価ヲ勘辨シテ、其価ヨリ少貴ク買取テモ、多クノ貨物ヲ一処ニ集テ、江戸・大坂ノ如キ都会ニ送テ、府庫ニ蔵置キテ、時価ノ貴キ時ニ売出サバ、国民ノ私ニ売ルヨリモ、其利多カルベシ〉と語られています。国主がまとめて売り物を運ぶのと、個人が運んだ場合を比較して考慮しろというのです。貨物を一括して運び、都会の諸藩の蔵屋敷に置いて、時価の高いときに売り出せば、個々人の売買に比べて利益が大きいと考えているのです。
 この方法については、〈今若領主ヨリ金ヲ出シテ、国内ノ物産ヲコトゴトク買取ヲ、民ノ従来私ニ他処ノ商人ニ売ルヨリモ利多キ様ニセバ、民必コレヲ便利ト思テ喜ブベシ。貨物ヲコトゴトク買取テ、近方ノ国ト交易スベキ物ヲバ、交易モスベシ〉と語られています。領主が物流を買い取って一括管理し、大量輸送して売却することで利益を上げろというのです。そうすれば、民も便利だと思って喜ぶというのです。

 

第五節 職責と市賈
 春臺は、〈凡今ノ諸侯ハ、金ナクシテ国用足ラズ。職責(ツトメ)モナリガタケレバ、只如何ニモシテ金ヲ豊饒ニスル計ヲ行フベシ。金ヲ豊饒ニスル術ハ、市賈(アキナイ)ノ利ヨリ近キハ無シ。諸侯トシテ市賈ノ利ヲ求ルハ、国家ヲ治ル上策ニハアラネドモ、当時ノ急ヲ救フ一術ナリ〉と述べています。金がなければ国に必要なことができす、職責も果たすことができないため、商いをして利益を求めろというのです。〈金銀モ銭モ少クシテ、国用足リ、士民不便ナラヌ様ニセンハ、大善ナレドモ、天下ノ制度ヲ改メ、人民ノ風俗ヲ易ズシテハ及ビガタシ。然レバ只一国ノ計策ニテ金銀ヲ豊饒ニスルヨリ外ノ事ナシ。金銀ヲ豊饒ニスル術ハ、市賈ヨリ近キコト無シ〉ということです。〈諸侯其国ノ土産ヲ以テ、他所ニ市賈センニ、何ノ憚ル所アランヤ〉と語られているように、商売をすることに遠慮はいらないというのです。

 

第六節 『経済録拾遺』考
 太宰春臺の『経済録拾遺』には、経済が病の治療に例えられています。まずは一国が、自身の病を治すように経済の立て直しをすべきだと語られています。
 春臺は、世の中における金銭の重要性を見据えています。そのため、商売によって利益を得るべきことを説いています。土地に合った栽培や兼業、それらによって出来る製品の交易によって、国に必要な物を補充し、国の富を増進させるというのです。
具体的には、製品を大量に買い付け、物流を集約して大規模輸送を実現し、保管場所を確保して時価にあわせて製品を売り出す方法が示されています。藩が、現在でいう企業活動を行うことが提案されているのです。春臺は、大いに商売して利益を出すことを勧め、そこに遠慮はいらないと考えているのです。

 

 

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