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日本式経済論:佐藤信淵『経済要略』の章

 

 佐藤信淵(1769~1850)は、江戸後期の経済学者です。学問の範囲は、農政・物産・海防・兵学・天文・国学などの広範に及んでいます。著作である『経済要略』から、日本の経済論を見ていきます。

 

第一節 経済
 経済の定義として、〈経済トハ、国土ヲ経営シ、物産ヲ開発シ、部内ヲ富豊ニシ、万民ヲ済救スルノ謂ナリ。故ニ国家ニ主タル者ハ、一日モ怠ルコト能ハザルノ要務ナリ〉とあります。世を経(おさ)め民を済(すく)うという原則に則って、経済の定義が示されています。
 経済運営については、〈創業・開物・富国・垂統ノ四篇ヲ紀シ、以テ其概略ヲ示ス。此四条ハ共ニ経済ノ最要ナリ〉と述べられています。経済における重要点として、四つ挙げられています。以下の節で、個別に説明していきます。

 

第二節 創業
 まずは、創業です。〈創業トハ国家ヲ富盛スルノ事業ヲ創(はじむ)ルヲ云フ〉とあります。続いて、〈凡ソ国家ヲ富実スルノ政ハ其国君ノ平日ノ行状ヨリ始ルコトニテ、先ヅ君侯自ラ恭倹ノ二徳ヲ脩ルニ非レバ決シテ成就セザル事ナリ〉とあります。まずは君主から、恭倹の二徳を修めよというのです。
 恭倹とは何かというと、まず〈恭トハ、貌容ヲ正クシ、辞義ヲ温ニシ、己レ謙(へりくだ)リテ有徳ヲ崇ビ、大臣ヲ敬ヒ、群臣ヲ愛シ、万民ヲ矜(あわれ)ミテ、敢テ己ガ慾ヲ縦(ほしいまま)ニセザルヲ云フ〉とあります。「恭」とは、容貌を整えて言葉遣いを温厚にし、相手によってきちんと敬ったり愛したり哀れんだりし、自分を控えめにして徳を学び、自分勝手をしないことです。
 次に、〈倹トハ、操守ヲ厳ニシ、動作ヲ簡ニシ、飲食ヲ菲(うすく)シテ、神祇ノ祭祀、先祖ノ法事ノミ豊潔ヲ致シ、衣服ヲ悪クシテ、宗廟・朝廷ノ礼服ニハ美麗ヲ尽シ、宮殿ヲ卑クシテ、山沢・河海ヲ開拓シ、田苑ヲ墾(あらきばり)シ、物産ヲ興ス等ノ事ニハ、精力モ財用モ共ニ打込テ其業ニ従事シ、日夜怠タラズ、諸事ニ心ヲ配リ、無益ノ華費ヲ警メ、恒ニ財用ヲ節約シテ此ヲ国家万民ノ為ニ用ヒ、己ガ栄曜ノ事ヲバ皆打止ルコトナレバ、此亦難儀ノ務ナリ〉とあります。長い定義ですが、簡単にいうと「倹」とは、生活は質素でも祭祀は清らかに行い、産業はしっかりと無駄遣いせずに行うことです。自分が栄えることも止めてしまえば、何事も難しくなると考えられているからです。

 

第三節 開物
 次に、開物です。〈開物トハ百穀・百菓ヲ始トシテ、種々水陸ノ物産ヲ開発シテ境内ヲ豊饒ニスルヲ云フ〉とあります。水からの恵みや土からの恵みによって、物産を開発して豊かさを実現する方法です。〈国土ヲ経緯シ、物産ヲ開発スルハ、人君天地ニ代テ万民ヲ安養スルノ本業ナリ〉というわけです。国土の特色に適った方法によって、豊かさを実現するのです。

 

第四節 富国
 次は、富国です。〈国ヲ富サント欲スル者ハ先ヅ財用ノ融通ヲ宜クシテ諸事厄塞(サシツカエ)ノ無キ様ニスベシ〉とあります。財産運用の必要性が説かれています。〈何トナレバ財用ノ融通ノ宜キハ金銀ノ自在ニ出入スルノミニテ、金銀ノ溜リタルニモ非ズ〉というわけです。ただ溜め込むだけでは意味がなく、運用してこと意味があるというのです。
 国家の富については、〈先ヅ其国ノ貧ク為リタル所以ヲ熟察セザレバ、此ヲ富スノ法モ亦詳カニ弁ジ難シ〉とあります。富ますためには、まずは貧乏になってしまったことの考察からだというのです。例えば、〈奢侈定度ヲ敗リ、華費分限ニ過グ。是レ貧ヲ招クノ始メナリ〉とあります。限度を超えた贅沢が、貧乏の原因だというのです。
 信淵は、〈国ヲ富マスノ法ハ他ナシ。唯是其貧ヲ致シタル所以ヲ熟察シテ此ニ反スルノミ〉と述べています。貧乏になることの反対のことを行うしかないというのです。
 具体策としては、〈水陸ノ道路ヲ経理シテ舟車ノ運漕ヲ便利ニシ、遍ク他国ノ物価ヲ校(ハカ)リ、群品ノ軽重ヲ察シ、貨物ノ有無ヲ遷(うつ)シ、高下ヲ転換シテ、以テ互市ノ利潤ヲ収メ、君民一致シテ国事ヲ営ミ、恒ニ貨財ヲ己ガ国ニ輻凑セシムルトキハ、境内自然ニ富実スル者ナリ〉とあります。交通網を整備や貿易を盛んにすることを説き、国を富ませることが語られています。

 

第五節 垂統
 最後は、垂統です。〈垂統トハ、国家ニ君タル者子々孫々万世衰微スルコト無ク、其ノ国家ヲシテ永久全盛ナラシムルヲ云フ〉とあります。君主の血筋によって、国家の連続性を守ることで国家の勢いを保つことが語られています。〈垂統ハ経済ノ最モ難キ者ナルコト、以テ察スベキナリ〉とあります。
 信淵は、〈国家ニ主タル者垂統法ニ依テ其ノ国土ヲ経理セバ、其ノ国ノ隆盛ナルコト天地ト共ニ永続シテ、八百万世ヲ経ルト雖ドモ衰敗スルコト無カルベシ〉と述べています。国家に国家の連続性を守る君主が居て、その連続性に依って経理を行えば、国家は栄えて衰えることはないというのです。

 

第六節 『経済要略』考
 佐藤信淵の『経済要略』には、経済についての方策が示されています。
 まず経済については、国土経営・物産開発・部内富豊・万民経済救として考えられています。その上で、経済における重要な点として、創業・開物・富国・垂統の四点が上げられています。
 創業とは、国家の富を盛んにするための事業をはじめることです。自分勝手を戒め、生活は質素に、祭祀は清らかにし、産業は無駄遣いせずに行い、その上で自分が栄えるべきことが説かれています。
 開物とは、国土の恵みによって物産の開発を行い、豊かさを実現することです。それは、万民の安定した生活のためだと説かれています。
 富国とは、財産運用を自在に行うことです。財産は溜め込むだけではなく、運用すべきことが説かれています。国富の方法は、貧乏になることと反対の方法だと語られています。具体的には、交通網の整備や貿易による利潤獲得などの方法が挙げられています。
 垂統とは、国家君主の血筋を守ることで、国家の勢いを保つことです。国家の連続性を守ることが、経理においても有効に働くことが示されています。
 これら四点は、国政を行う者が一日も怠ってはいけない要務だとされています。

 

 

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