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『アホガール(2) (ヒロユキ)』ーアホの知とアホの愛ー

 

 『アホガール』の2巻目です。今回も、世の中の鋭い真実があぶりだされています。どの回も見所がありますが、特に深いと感じたのは「その21」と「その27」です。
 まず「その21」では、「アホの知」が出て来ます。「アホの知」とは何か? そうです。あのソクラテス先生の「無知の知」と同じ境地なのです。「無知の知」とは、超ざっくり言うと、よく知りもしないことを知っていると思い込んでいる人がいるけど、少なくとも自分は知らないということは知っている、ということです。
 このマンガが恐ろしいのは、アホなよしこが単独で、何の哲学的教養もなく、「無知の知」と同じ境地へたどりついたことを的確に描写しきっていることです。
 よしこの担任のあつこ先生は、よしこのアホさを直そうと文章問題を出します。文章から読み取れる作中の人物の心理状態を問うのです。それに対しよしこは、簡単に人の気持ちが分からないという論理を持ち出すのです。教科書の解答を持ち出すあつこ先生に対し、よしこは言い放つのです。

 

 私は「わからない」ということは・・・・・・わかっている!!

 人は「わからない」ということを知ってこそ学ぼうとする・・・・・・。

 教科書の答えでわかった気にさせることが、あなたの言う教育なのか――!!

 

 あつこ先生ズガーンッ、でございます。そこからの、あつこ先生の誠実さがあさっての方向へ突っ走るのも見物ですし、そこでツッコミ役のあっくんの対応も見事です。生徒に実直に向き合う先生の態度が必ずしも良い方向へ向かうとは限らないということ、真実とは別にまた違った観点からの社会的な正しさがあるのだということ、それらをこのマンガは適切に描写しているのです。深いですね。
 次ぎに、「その27」です。この話は、よしこが少年2人と少女1人の子供グループとヒーローショーへ行くというストーリーです。例によって、少女の希(のぞみ)ちゃんが、ヒーローショーの悪役の人質になります。そこでアホのよしこが、ヒーローの登場を待ちきれずに自分で希ちゃんを助けようとします。少年二人は、希ちゃんがよしこになついてアホになることを懸念し、自分たちで悪役と戦って希ちゃんを助けようとします。彼らは、「友達の未来はオレ達が守る!!」と言うのです。彼らは少年と呼ばれる年齢ながら、漢と書いてオトコと読むべき成長を遂げるのです。しかし、彼らの頑張りにも関わらず、希ちゃんは「ありがと――、よしこおねーちゃん!」とよしこに懐くのです。ナレーションも、「少女の未来を守る為、明日も頑張れ少年達」と哀れな少年達にエールを送るわけです。この不条理さに、笑いが生まれるわけですね。
 しかし、注意してみましょう。本当に、それほど単純な話なのでしょうか? 『アホガール』という作品には、きちんとした深い意味が隠されているはずです。それを考察していきましょう。
 ここで注目すべきは、希ちゃんを助ける動機なのです。少年たちは、「ここで、よしこが希を助けたら・・・、きっと、あいつもっと、よしこになついて・・・・・・」と言い、希ちゃんがよしこのようにアホになってしまうことを想像するのです。その上で、「オ・・・オレ達がやるしか!!」と言うのです。つまり、彼らは希ちゃんのことを心配してはいるのですが、それは自分たちが大変になるからだという利己的な理由もあるのです。
 それに対しよしこは、これはショーだというツッコミに対し、「ショーだろうが希ちゃんの涙は本物だ!! ならば一刻も早くその悲しみから救ってあげるのが・・・、それが友であり・・・、ヒーローだ――!!」と言うのです。よしこの動機は、希ちゃんの悲しみに根ざしているのです。そうです。ショーの上での話だとしても、怖がっている希ちゃんの涙は本物の涙なのです。
 少年たちの動機には、残念ながら、希ちゃんの悲しみという現在の視点が欠けていたのです。現在の悲しみを見失った者が、未来を語ったとしてもその思いが届くことはないのです。戦いの後、希ちゃんがよしこへの感謝を強く示すのも当然だと言えるでしょう。よしこは確かにアホです。ですが、アホゆえに、ショーというお約束によって隠されてしまった本物の涙を見抜いたのです。そして、希ちゃんもそれに応えたのです。見事というしかないでしょう。
 以上のように、『アホガール』は非常に深い作品なのです。一見して、よしこのあまりのアホさ加減を笑うだけのマンガに思えます。しかしその実、アホさ加減によって世の中の鋭い真実があぶりだされるという、極めて思想的に深い論点が提示されているマンガなのです。
 つまり、この『アホガール』こそ、世の中の真理をあぶり出す高度な思想マンガだったんだよ!!

 

(; ・`д・´) ナ、ナンダッテー !! (`・д´・ (`・д´・ ;)

 

 あと、さやかちゃん可愛い。普通かわいい。地味かわいい。

 

PS.
 ちなみに、ソクラテス自身は「無知の知」という言葉は使っていません。念のため。

 

 

 

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