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『幽☆遊☆白書』ー強さについてー

 

 私には、少年時代に大きな影響を受けた漫画があります。それは、冨樫義博の『幽(ゆう)☆遊(ゆう)☆白書(はくしょ)』です。1990年~1994年まで『週刊少年ジャンプ(集英社)』で連載されていました。
 この作品は、私の精神に刻まれた糧の一つです。

 

はじめに
 作中の内容は大まかに分けられますが、その中の「暗黒武術会編(戸愚呂兄弟編)」の内容について語ります。
 暗黒武術会とは、闇の力を使い富を築いた裏社会の富豪や実力者達が、それぞれ最強メンバーを集め、バトルを繰り広げる史上最悪の格闘技戦のことです。この大会には"ゲスト"として闇の世界に深くかかわり、裏社会の人間にとってじゃまとなる人間が強制的にエントリーされます。拒否することは、すなわち己の死を意味することになります。生き残るには、参加して勝つしかないのです。
 主人公である浦飯幽助は、ゲストとして暗黒武術会に参加します。幽助の師匠である幻海も、大会に参加することになります。暗黒武術会のラスボスは、戸愚呂・弟(以降、単に戸愚呂)です。この三名の関係から、強さについて考察していきます。

 

継承
 大会の途中、幻海は幽助に奥義伝授の試練を与えます。試練の前に、幻海は幽助に次のように語っています。

幻海「老いか・・・。年をとれば技は練れる。かけひきにも長ける。――だが、圧倒的な力に対して対応しきれなくなる日は必ずくる。あたしはそれでいいと思っている。流れのまま、生き、死ぬ。次の世代に望みをたくせればな。」

 そして、幻海は、強くなるために自分を殺せと幽助に言います。自分を殺さないと、この試練はのり越えられないと。幽助に、殺す覚悟が出来たら来いと言い放ちます。
 幽助は、雨の中、立ちつくして考えます。幽助は、考え尽くした後、幻海に次のように述べています。

 幽助「ばあさん。できねェよ・・・・・・・・・。オレにはできねェ。ずっと突っ立って考えてた。生きてきて一番頭使ってみた。やっぱ、できねーわ。強くなりてーけど。」

 この回答に対し、幻海は合格を出します。

幻海「自分が強くなるために、師匠を殺そうってな結論出す奴にあたしが奥義伝承すると思うかい? かといって、悩みもしないでやれませんってな毒気のない奴も同じ位嫌いだがね。」

 幻海は幽助へ奥義を伝授します。霊力を極限まで凝縮したエネルギー球を幽助へ渡し、自身の力のほとんどを譲り渡します。
 幽助に力を渡した後、幻海は戸愚呂と戦い、殺されます。死に際に、幻海は幽助に言葉を残します。

幻海「幽助・・・。人は・・・みな・・・時間と闘わなきゃならない・・・。奴は・・・その闘いから逃げたのさ・・・。誇りも・・・魂も・・・仲間も全て捨てて・・・。お前は・・・間違えるな・・・・・・幽・・・助・・・。お前は・・・一人じゃない・・・・・・・・・忘れるな・・・誰のために・・・強く・・・。」

 

過去
 幻海と戸愚呂は、かつて共に武道を極めんとする仲間でした。二人は、仲間時代に次のような会話を交わしています。

戸愚呂「オレもお前も今が強さの最盛期だろうな。時が止まればいいと最近よく思う。オレは怖いんだ。オレ達より強いヤツが現われることが怖いんじゃない。そんな奴が現われたとき自分の肉体がおとろえていたらと思うと怖いのだ。口惜しいのだ。人間とは不便なものだな。」
幻海「あんたが年をとれば、あたしも年をとる。それでいいじゃないか。」

 幻海と戸愚呂は、50年前に開催された前回の暗黒武術会の"ゲスト"でした。武術会の三ヶ月前に、戸愚呂の弟子のすべてが、当時の優勝候補ナンバーワンの妖怪に殺されています。戸愚呂へ"ゲスト"で出場することを告げるついでに、その妖怪は弟子達を次々と殺して喰ったのです。その時、戸愚呂は、完璧にやられて立つことすらできない状態でした。
 それまでの戸愚呂は、自分が一番強いという自信がありました。しかし、戸愚呂はそのとき全てを失ったのです。それから三ヶ月間、戸愚呂は完全に消息を絶ちます。
 戸愚呂が、幻海ら他のゲストの前に姿を現したとき、心の中には鬼が棲んでいました。戸愚呂は大会の決勝で、仇の妖怪を殺します。そして、優勝した戸愚呂の望みが妖怪に転じることでした。
 妖怪に転じた戸愚呂は、50年前の若い姿のまま、老いた幻海と立ち会い、殺したのです。

 

決戦
 大会の決勝戦で、幽助と戸愚呂は戦います。
 戸愚呂は幽助が憤怒で力を引き出すことを理解していたため、幽助の仲間を殺して怒らせようとします。仲間を殺されたと思った幽助は、怒りとともに自身の力を引き出します。

幽助「許せねー・・・。誰より、自分自身(オレ)を許せねーよ・・・・・・。」
戸愚呂「ふっきれたな。」

 戸愚呂は、幽助が同じ強さの境地に近づきつつあると言います。それに対し、幽助は違うと否定します。

戸愚呂「心が痛むかな。くくくくくくく。"はしか"みたいなものだ。越えれば二度とかからない。今お前は無力感に病んでいるのだろう!? 強くなりたくないか!? もっともっとだ!! オレと同じ境地に!! 他の全てを捨ててでも!! それが今だ!! 強く信じろ。力が全てだと!!」
幽助「オレは、あんたと違う。オレは捨てられねーよ。みんながいたから、ここまでこれたんだ。」

 戸愚呂は、幽助の甘さを指摘し、幽助はもう一人で十分なのだと言います。それに対し、幽助は次のように答えています。

幽助「オレは・・・・・・・・・どこかで、あんたに憧れてた。絶対的な力の差を見せつけられて、小便ちびりそうにビビリながら、その強さに憧れてたんだ。あんたの強さの正体もわからずに。全てをなげうってでも、そう思ってた・・・。ばーさんが何度も、何度も教えてくれたのに。あんたが捨てたものの重みが・・・、ようやく・・・・・・・・・わかりやがった。オレは捨てね―――!! しがみついてでも守る!!」

 幽助と戸愚呂の戦いは、最後の佳境をむかえます。

幽助「次が最後の一発だ。オレの全ての力をこの一発に込める。あんたが魂を捨てた代わりに得た力全部・・・全部まとめて使ってかかってこい。あんたの全てを壊して、オレが勝つ。」
戸愚呂「いい目だ。そんな目をして挑んできた奴の屍を乗り越えてオレは勝ってきた。そんな時は、相手がどんなに弱くても全力を出したよ。そして、今ならかつてない力が出せる!! 勝負だ!!」

 戸愚呂は、フルパワーで幽助へと向かいます。

戸愚呂「何か一つを極めるということは、他の全てを捨てること!! それが出来ぬお前は結局はんぱ者なのだ。」
幽助「・・・・・・・・・捨てたのかよ? 逃げたんだろ?」

 幽助の最後の攻撃によって、戸愚呂は倒れます。戸愚呂は最期に、「他の誰かのために、120%の力がだせる・・・。それが、お前達の強さ・・・・・・・・・」と言って死亡します。

 

解釈
 戸愚呂という人物は、作中で特別な役割を果たしていたと思います。主人公である幽助を導く役割です。
 作中の登場人物の内、二人が戸愚呂の胸の内を推測して発言しています。

「オレには彼がずっとこうなることを待ってたような気がしてならない。本当に強い者が自分を倒してくれることを・・・。悪役を演じ続けてでも・・・。」

「たとえ優勝して敵(かたき)を討っても、自分自身の中で罪の意識が消えなかったのだろうな。それからのヤツの人生は償いというより拷問だ。強さを求めると自分を偽って・・・。全く不器用な男だ。」

 あの世において、戸愚呂と幻海が会話を交わしています。

 戸愚呂「お前にはまだ仕事が残っている。浦飯幽助、奴にはお前がまだ必要だ。奴は、必ずまだ強くなる。だが、間違えればオレみたいになっちまう。お前がもう少しお守りをしてやれ。」

 戸愚呂は、幻海の現世への帰還を、自身が苛酷な地獄へ行くことと引き替えに、閻魔大王(の子供)と取引していたのです。
 幻海は、「最後の最後だってのに・・・、出る言葉が負かされた対戦相手の心配かい」と心の中で思った後、次のように返します。

幻海「たいしたもんだよ。あんたのバカも。死んでもなおりゃしないんだから。」
戸愚呂「世話ばかりかけちまったな・・・・・・・・・」 

 

 

 

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