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政治制度論『ホッブズ』

 

 ホッブズ(Thomas Hobbes、1588~1679)は、イギリスの哲学者です。著書である『リヴァイアサン』では、社会の自然状態から、人間が相互に契約を結んで一つの意志に服従する必要を説いています。

 

第一節 『リヴァイアサン』の政治制度
 ホッブズの『リヴァイアサン』には、〈多数の人々が一個の人格に結合統一されたとき、それは≪コモンウェルス≫――ラテン語では≪キウィタス≫と呼ばれる〉とあり、コモンウェルスという言葉が出てきます。コモンウェルスは、〈それは一個の人格であり、その行為は、多くの人々の相互契約により、彼らの平和と共同防衛のためにすべての人の強さと手段を彼が適当に用いることができるように、彼ら各人をその(行為の)本人とすることである〉と定義されています。
 統治の形態については、〈すでにコモンウェルスを設立した人々は、主権者の行為、判断を認めることを契約により義務づけられているのだから、彼の許可なしには、いかなるばあいであれ、他の何者かに新しく服従する契約を彼らのあいだで合法的に結ぶことはできない〉とされています。そのため、〈君主のもとの国民は、彼の許しなく君主政を放棄し、統一のない群衆の混乱に戻ることも、彼らの人格を現在狙っている者から他の者あるいは合議体に移すこともできない〉とホッブズは述べています。
 ただし、ホッブズは、〈主権者にたいする国民の義務は、主権者が国民を保護できる権力持ち続けるかぎり、そしてそのかぎりにおいてのみ、継続するものと考えられる〉と述べています。ホッブズのこの意見については、注意が必要です。
 形態の種類については、〈代表者がひとりのとき、そのコモンウェルスは≪君主政≫(モナキィ)、また集まる意志のあるすべての者の合議体の場合は≪民主政≫(デモクラシィ)あるいは人民のコモンウェルス、そして一部の者の合議体のときは≪貴族政≫(アリストクラシィ)と呼ばれる〉とあります。
 コモンウェルスがつくられた理由は、〈人間は平和を獲得し、それによって自己保存をはかるために、私たちがコモンウェルスと呼ぶ人工の人間をつくりあげた。同じように人間は、「市民法」と呼ばれる人工の鎖をつくった〉とあります。市民法については、〈≪市民法≫とは、人があれこれの特定のコモンウェルスではなく、コモンウェルス一般の構成員であるがゆえに守らねばならぬ法律である〉とあり、〈≪市民法≫とは、すべての国民にとってコモンウェルスが善悪の区別、すなわち何が規則違反で何がそうでないかを区別するのに用いるよう、ことば、文書、その他意志を示すに十分なしるしによって彼らに命じた諸規則である〉と定義されています。
 ホッブズ自身の要約では、〈まったくの自然状態、いいかえれば、絶対的自由の状態、たとえば主権者も国民もないような状態は、無政府状態であり、また戦争状態であるということ。その状態を避けるために人々が導かれる戒律は自然法であること。主権者権力を伴わないコモンウェルスは、実体のないことばにすぎず、存立しえないこと。国民は、その服従が神の法に反しないかぎり、すべてのことがらにおいて、主権者に単純に服従すべきであるということ。以上のことを、私はこれまで記したところにおいて十分に証明した〉と語られています。

 

第二節 『リヴァイアサン』の政治考察
 ホッブズの『リヴァイアサン』に描かれている政治制度論について考えてみます。
 ホッブズは統治形態について、代表者の数により君主政・民主政・貴族政という分類を行っています。それらは主権者との契約によって成り立っているため、放棄も他への移行も禁止されています。なぜなら国民は、危険な自然状態から、主権者との契約によって抜け出せているからと説明されています。
 ホッブズの自然状態の考察は、思想実験としては考えてみるべき点があります。しかし、人類はその誕生から、いいえ、それ以前の類人猿や猿の段階においても、それなりの関係性の上を歩んできたことに注意すべきです。
 ホッブズの意図とは逆に、社会契約は、人類が大昔に結んだ契約なのではなく、関係性における歴史を無視して、新たに国家を建設するための根拠と見なされてしまう恐れがあります。この点については、警戒しておくべきです。
 また、統治形態の放棄・移行の禁止は、後の哲学者たちの批判を受けます。その批判のやり方は玉石混淆ですが、ホッブズの見解については、批判を受ける余地が確かにあると思われます。

 

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