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カレル・チャペック『ロボット』

 

 「ロボット」という用語は、チェコの作家カレル・チャペック(Karel Čapek, 1890~1938)のSF劇『R・U・R――ロッスムのユニバーサルロボット』(通称『ロボット』)で登場した言葉です。
 ロボットという言葉が生まれた経緯については、チャペック自身が次のように語っています。

 

 「でもねえ、その人工の労働者をどう呼んだらいいのか分からないんだ」と、著者はいった。「もしラボルとでもいうと、どうも自分には本物らしくなく思えてね」
 「じゃあロボットにしたら」と、画家は口に刷毛をくわえて、絵を描きながらいった。それが採用された。そういう経緯でロボットという語が生まれたのである。

 

 ここで登場する画家は、兄のヨゼフ(Josef Čapek, 1887~1945)です。チェコ語には「賦役」を意味するrobota(ロボタ)という語があり、その語末のaを取るとrobot(ロボット)になります。
 『R・U・R』のロボットは、生体部品を使用したバイオロイド (bioroid)、つまり有機的人造人間のことです。そのため、現在の機械的な部品で構成されたロボットとはイメージが異なるかもしれません。
 カレル・チャペックは天才であり、『R・U・R』には後のロボットものに登場するテーマがほとんど網羅されています。ロボットものの原初でありながら、数多くのテーマを非常に深い水準で描写していることは驚嘆に値します。キリスト教の思想性を背景にした描写もあるため、日本人にはやや読みにくいところもありますが、天才の代表的作品としてお勧めすることができます。
 『R・U・R』の簡単な要約はできませんし、したくもないので、作中での印象深い言葉を抜き出して紹介にかえさせていただきます。引用文は、岩波文庫の千野栄一訳から行っています。

 

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 「自然は生きた物を形成するただ一つの方法を見つけたにすぎない。ところが自然がまったく知らない、より簡単で、より作りやすく、より速い、別な方法がある。その方法で生命の発展がうまく進められ得るもう一つの道を私は今日見出した」。

 

 科学的にというか神を引きずり下ろそうとしたのです。あの人は根っからの唯物論者でした。だから何もかもやってみたのです。あの人にとっては、どんな神様も無用であるという証拠を出すことだけが大切だったのです。ですからわれわれと髪の毛一筋違わない人間を作ろうと考えついたのです。

 

 「人間を十年もかけて作るなんてナンセンス。自然より速く作れないなら、こんなくだらないものは全部やめにした方がいい」。

 

 ロボットは人間ではございません。機械的には私たちよりもより完全で、素晴らしい理性的知性を具えておりますが、魂は持っていないのです。

 

 それから死ぬのですか?
 はい、消耗してしまうのです。

 

 ロボットだって私たちと同じよい人間だわ。

 

 ロボットたちは生きることに執着していないのです。そもそも何のために生きるかを知らないし、生きる喜びを持たないのです。あの連中は雑草以下なのです。

 

 一体のロボットは二人半分の仕事をします。

 

 人間という機械はとっても不完全だったのです。いつかは最終的に除去されねばならなかったのです。

 

 わたくしたちが望んでいるのは――特に――わたくしたちがロボットを解放したいということです。
 どうやってですか?
 ロボットたちを人を扱うように・・・・・・扱うようにするべきです。

 

 それはできないのです。ただのロボットにすぎないからです。自分の意志を持たないのです。情熱もなければ、歴史もなく、魂もないのです。

 

 どうして魂を作ってあげないのですか?
 それはわれわれのできることではないからです。
 それは私たちの関心外です。

 

 貧困もなくなります。そうです、仕事もなくなります。でもその後ではもう労働というものがなくなるのです。何もかも生きた機械がやってくれます。人間は好きなことだけをするのです。自分を完成させるためにのみ生きるのです。

 

 かつては奉仕することの中に何か良いものがあったし、恭順さの中に何か偉大なものがあった。ああ、ハリー、よく分からないが労働や疲労の中に徳のようなものがあった。

 

 アダム以来のこの世を作り直そうというとき、失われる物のことを考慮するわけにはいかないのだ。アダムよ、アダム! もう額(ひたい)に汗して得た自分のパンを食べることはない。もう飢えや乾きを、疲れや屈辱を知ることもない。主の御手がお前を養ったあの天国へと戻るのだ。お前は自由であり、何ものにも制限されることはない。自分を完成させること以外のいかなる課題も、いかなる仕事も、いかなる心配もする必要はない。お前は創造主になるのだ。

 

 アーメン。

 

 これは世界の終わり。悪魔のようにうぬぼれて、神様みたいに人間を作り出そうなんてしたからです。これは不信心というもので、おまけに神様みたいになりたいという不遜な行ないです。それで神様が人間を天国から追放したように、今度はこの世界から追い出されるのです!

 

 なぜ女の人たちに子供ができなくなったの?
 それが必要ではないからです。私たちは楽園にいるからです。お分かりですね。
 分かりませんわ。

 

 人間に地上で楽園を与えることよりひどいことはないのです!

 

 なったんだ! なったんだ! 全世界、全大陸、全人類、ありとあらゆるものが気の狂ったけだものの狂宴になったのだ! もう食物に手を差しのべることすらしない。起き上がる必要がないように、まっすぐ口へと押しこまれるのです――ふふ、ドミンのロボットが何もかもやってくれるからです!

 

 では人類は亡びるの?

 

 私を粉砕機送りにして下さい。

 

 あなた方がロボットのようにではないからです。あなた方がロボットのように有能ではないからです。ロボットが何もかもします。あなた方ときたらただ命令するだけです。よけいなおしゃべりをしているのです。

 

 私には主人なんかいりません。すべて自分でどうしたらいいか知っています。

 

 私は他の者たちの主人になりたい。

 

 私は人間たちの主人になりたい。

 

 私を粉砕機に入れても結構です。

 

 私は何でもできるのです。

 

 それぞれの工場から生産されるロボットは皮膚の色が違い、違った毛を持ち、違った言葉を話すのさ。お互いに見知らぬ、まるで石のように無関係になり、もう永遠に理解し合えないようになる。そして、それに加えて、われわれ人間がやつらにほんのちょっとだけ教育をほどこすというわけ、分かるかい? ロボットが死んで墓に入るまで永遠に他の工場のマークのついたロボットを憎むようにさ。

 

 何があろうとも――人類がもう百年だけはかじをとらなければならない! 人類が成長し、やっと今日できるようになったことに到達するのに、ただ百年の年月があって欲しいのだ――新しい人間のために百年が欲しいのだ!

 

 「全世界のロボットに告ぐ! われわれ、ロッスムのユニバーサル・ロボットの最初の組織は、人間を敵であり、宇宙に家なき者であると宣言する」

 

 「全世界のロボットよ、人類を絶滅することを汝らに命令する。男を容赦するな。女を容赦するな。工場、鉄道、機械、鉱山、資源を保存せよ。その他のものは破壊せよ。その後労働に復帰せよ。仕事をやめてはならない」

 

 ロボットたちをあまりにも同じ顔にしたことさ。何万という同じ顔がこっちを向いているんだ。何万という無表情な泡粒が。悪夢を見ているようだ。

 

 犯罪だったのはロボットを作り出したことさ!

 

 犯罪だったのはロボットを作り出したということさ!

 

 労働という奴隷制度を打ち壊すというのは悪い夢ではなかった。人間が耐えねばならなかった、人々をいやしめたひどい労働から人を救うのは。

 

 その連中の夢は配当だった。そして、連中の配当のために人類は亡ぶのだ。

 

 自分の満足のためにしたのさ。私は人間が主人になることを望んだのだ! もう、ひときれのパンのために生きなくていいように!

 

 ああ、辱めとか痛みを見るのは耐えがたいし、貧困は大きらいだ! 新しい世代を私は望んだんだ!

 

 私は人類というものから世界の貴族階級を作ろうとした。制限されることのない、自由な、至高の人たちを造ろうとした。それは人間以上であってもいい。
 それではすなわち超人を。
 そのとおり。そう、百年の時さえあれば! 次の人類のためのもう百年があれば!

 

 ばかげてるよ。誰にも罪なんかないさ。要するに――ロボットがだ――うん、ロボットたちがどうやら変ったんだ。いったい、誰がロボットのしたことに責任がとれるものか?

 

 あの連中を人間に作り直したのです。われわれより秀れたものにしたのです。今ではもうある点ではわれわれより上です。われわれより強力です。

 

 あの連中は機械であることをやめた。もう自分たちの方が優勢なことを知っているし、われわれを憎んでいる。いいかね。人間的なものをすべて憎んでいるのだ。私を裁いてくれ。

 

 私はロボットのことを怖いと思いました。
 なぜだね?
 私たちのことを憎むんではないか、とか。
 そうなったね。
 だからそのとき考えたの・・・・・・もし私たちみたいだったら、私たちのことも理解できて、そんなに憎めないだろうって――もしもほんのすこし人間であったなら!

 

 人が人を憎む以上に、ひどい憎悪なんてないのさ! 石を人間にかえるがよい、そうすればその連中がわれわれを石で打ち殺すのに!

 

 だって私が望んでのですもの。

 

 これは恐るべき第一歩だ。人類の運命を売ろうとしているのだから。製造方法を手中に収める者が、世界の支配者になるのだから。

 

 人類の歴史の最期で、文明の最期――

 

 世界のロボットよ! 人間の権力は地に落ちた。工場の占領により、われわれはあらゆるものの支配者となった。人類の時代は終った。新しい世界が来たのだ! ロボットの国家だ!

 

 世界はより力のある者たちのものだ。生きたいと思う者は制覇しなければならない。われわれは世界の支配者だ。陸と海を支配する国家だ! 星を支配する国家だ! 宇宙を支配する国家だ! 場所、場所もっと多くの場所をロボットに!

 

 人間はいない。ロボットよ、仕事にとりかかれ! 行進!

 

 わたくしたちは人間のようになりたかったのです。人間になりたかったのです。

 

 私たちは生きたかったのです。私たちの方が能力があります。私たちはすべてのことを学びました。すべてのことができます。

 

 われわれは人間の欠点に気がついたのです。

 

 人間としてありたければ、お前たちは殺し合い、そして、支配をしなければならないのだ。歴史を読んでみるがいい! 人間の本を読んでみるがいい! 人間でありたいのなら、支配しなければならず、人間を殺さなければならない!

 

 おお、主よ、人間の姿ほど人間にとって無縁なものはないのです。

 

 ロボットは生命ではない。ロボットは機械さ。
 われわれは機械でした、先生、でも恐怖と痛みから別なものになったのです――
 何にかね?
 魂になったのです。

 

 何かがわたくしたちと争っているのです。わたくしたちの中に何かが入りこんでくる瞬間があります。われわれの中からではない考えが、われわれにやってくるのです。いきたいと呼ぶその声、なげき悲しむその声、考えているその声、永遠について語るその声、これは人間の声です! われわれは人間の子なのです!

 

 人間の遺産を渡して下さい。
 何もない。

 

 生命の秘密を渡すのだ。
 失われてしまったさ。

 

 そこに何があるの?
 何にも、小さな家と庭だけ。それに犬が二匹。犬が私の手をなめるさまを見てごらんなさい、それにその子犬たちときたら、ねえ、プリシム、これ以上美しいものなんてきっとないわ!

 

 ご老人、二人のうちどちらも殺させないぞ!
 なぜ?
 ――僕たち――僕たちは―― 一体なんだから。
 よくぞ言った。(真中のドアを開ける)静かに。行くがよい。
 どこへ。
 (ささやきで)どこなりと。ヘレナ、彼を連れてお行き。(二人を外へ押し出す)行きな、アダム。行きな、エバ。彼の妻になるがいい。プリムス、彼女の夫になるがいい。

 

 偉大な発明家たちよ、純愛、涙、愛の微笑み、男と女の愛を見出した、あの女の子、あの男の子、あの最初の二人と比べて、あんたたちはどんな偉大なものを作り出したのかね? 自然よ、自然よ、生命は不滅だ! 仲間よ、ヘレナよ、生命は不滅なのだ! それはふたたび愛から始まり、裸のちっぽけなものから始まる。

 

 主よ、今は何時の下僕に安らぎをお与え下さい。私の目は見たのです――見たのです――愛による主の救いを。生命は死に絶えることはありません! (立ち上がる)不滅です! (両手を前にさしのべる)不滅です!

 

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