『遊歌集』[Ⅲ]流星
現実に存在するということ。
今に居ること。
今、世界の中の此処に居ること。
今の特異性。
今の連続が時間の意識を生む。
認識のすべては時間において。
時間を掛けて、世界の秘密に迫る。
それでも、その探求は原理的に世界の壁(限界)を超えられない。
理解することには限界がある。
人間の認識には限界があるのだから。
認識主体と認識対象。
その両面から限界が現れるだろう。
認識主体の限界。
人間という認識装置による限界。
種による身体の共通性から導かれる回答。
認識対象の限界。
世界という法則支配による限界。
確率的な計算によって導かれる回答。
完璧な真理には、到達できない。
力不足で到達できないときもあるだろう。
そして、原理的に到達できないときもあるだろう。
一は、分かれる。
今は現実の現在。
過去・現在・未来という時間意識。
時空の謎。
時間を意識するためには、物体が存在していなければならない。
自我ではない物体の存在。
物体が、いくつか存在している。
そこから、空間という場の認識が生まれる。
ゆえに、物体が空間において動く、ということが可能になる。
空間において、物体が動いているから、時間が正確に解かる。
例えば、時計という概念のように。
世界における自分の意識。
時間軸における現在の意識が、自分の意識。
自我と物体。
そして、自分と世界。
自我が認識する世界
世界における自己。
だから、唯一は唯一でなくなった。
自分は現実の世界において、現在の今において。
夢や幻や狂気すらが、現実の時空間を前提とする。
前提がなければ、逸脱すら生じ得ないのだから。
今という瞬間における自分の存在は、
物体の存在を認識することで可能となる。
すなわち、物体を含んだ世界の存在を必要とする。
そこで物体は、自我とは異なったあり方で存在する。
なぜなら、認識主体と認識対象は異なるのだから。
自我と物体は区別される。
物体の区分。
世界における受動と能動。
見える、聞こえる、といった受動性。
動かしたいように動かせる、といった能動性。
世界における物体のうち、自分の身体が特別視される。
自我そのものは身体を伴わず、自己は身体を持つ。
こそあど言葉における、これ性とあれ性の区別。
自分の身体と同じようなものの認識。
すなわち、他者の存在が現れる。
同じようで決定的に違うもの。
自己と他者。
言葉が生まれるだろう。
時間軸が他者と共有されている、ことになる。
自己と他者の類似のゆえに、共通の見解が築かれるかもしれない。
こそあど言葉における、これ性とそれ性の区別。
言葉は意味を生み出す。
世界において、あまたの境界を引くことになるだろう。
例えば、生命と非生命を分けるだろう。
境界線が世界を駆け巡る。
数々の境界線の生成と消滅。
こそあど言葉を、文脈に応じて使い分けることができるだろう。
快苦。
快いことと苦しいこと。
両方が与えられているだろう。
自分は他者たちと言葉を交わす。
他者たちへの濃淡が浮かび上がる。
誰かを特別に想うだろう。
愛という言葉は、これ性とそれ性の調和において。
どのように認識しているのだろう。
どのような価値観を持っているのだろう。
どんな関係を築けるのだろう。
世界において、自分を超えたものがあるかもしれない。
だから、できることと、できないことを考える。
やれることをした後に、運命が訪れる。
理不尽にして不条理。
運という要素が、自身の命運を左右する。
祈り。
祈るという振る舞いがありえるだろう。
何にでも祈ることができるだろうが、
祈るためには何かがなければならないだろう。
どのようにでも祈ることができるだろうが、
祈るための所作がなければならないだろう。
祈るものや祈ることが同じとき、生まれる何かがあるだろう。
それらが異なるとき、すれ違う何かがあるだろう。
だから、そこに複数の何かが必要とされるだろう。
世界の豊穣性、そして、そこにおける複数性。
多くの物語が語られるだろう。
多くの歴史が紡がれるだろう。
自己と他者の間で、人と人の間で、人間が生きている。
ときに助け合うだろう。
ときに殺し合うだろう。
ときに共に祈るだろう。
祈るものや祈ることが同じでも、ずれてしまう何かがあるだろう。
それらが異なっても、かみ合う何かがあるだろう。
人と人の間で、人間が生きていて、自分が生きている。
問いそのものに楔を打ち込む。
問いと答えは必ずしも連動しない。
答えの出ない問いがありえるだろう。
答えの無い問いがありえるだろう。
それでも人間は、生命を紡ぐだろう。
たとえ、それが儚い夢なのだとしても。
【解説】
ここの前半では、カントの『純粋理性批判』の最も重要だと思われる箇所を煮詰めて、自分なりに追記して論じています。その上で後半は、『実践理性批判』とはまったく異なる原理において話が展開されていきます。
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