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第二部『第十二章 フロムの「自由」』

【目次】
第一節 『自由からの逃走』
第二節 『人間における自由』
第三節 フロムの「自由」についての考察

 

第十二章 フロムの「自由」
 フロム(Erich Fromm, 1900~1980)は、米国の精神分析学者で社会思想家です。著作である『自由からの逃走』と『人間における自由』から、フロムの自由について見ていきます。

 

第一節 『自由からの逃走』
 『自由からの逃走』の主題は、次のように述べられています。

 本書の主題は、次の点にある。すなわち近代人は、個人に安定をあたえると同時にかれを束縛していた前個人的社会の絆からは自由になったが、個人的自我の実現、すなわち個人の知的な、感情的な、また感覚的な諸能力の表現という積極的な意味における自由は、まだ獲得していないということである。自由は近代人に独立と合理性とをあたえたが、一方個人を孤独におとしいれ、そのため個人を不安な無力なものにした。この孤独はたえがたいものである。かれは自由の重荷からのがれて新しい依存と従属を求めるか、あるいは人間の独自性と個性とにもとづいた積極的な自由の完全な実現に進むかの二者択一に迫られる。

 フロムは、〈近代のヨーロッパおよびアメリカの歴史は、ひとびとをしばりつけていた政治的・経済的・精神的な枷から、自由を獲得しようとする努力に集中されている〉と述べています。つまり、〈人間性は人間進歩の産物である〉と考えているのです。
 その考え方に立って、〈自由は人間存在そのものを特質づけているということ、さらに、自由の意味は、人間が自分を独立し、分離した存在として意識する程度にしたがってちがってくるということ〉が述べられています。フロムの目からは、〈中世末期以来のヨーロッパおよびアメリカの歴史は、個人の完全な解放史〉と見えているのです。
 フロムの用語法では、消極的な自由と積極的な自由が、〈「・・・・・・からの自由」と「・・・・・・への自由」〉として示されています。フロムは積極的な自由を肯定し、〈すべてはみずからの努力にかかっており、伝統的な地位の安定にかかっているのではない〉と述べています。その上で、〈われわれみずからの自我を実現させ、この自我と人生とを信ずることができるような、新しい自由を獲得しなければならない〉と語っています。積極的自由へ進むか、自由から逃避するかが、二つの道として示されているのです。
 具体的には、〈一つの道によって、かれは「積極的自由」へと進むことができる。かれは愛情と仕事において、かれの感情的感覚的および知的な能力の純粋な表現において、自発的にかれ自身を世界と結びつけることができる〉とあります。一方、〈もう一つの道は、かれを後退させ、自由をすてさせる。そして個人的自我と世界とのあいだに生じた分裂を消滅させることによって、かれの孤独感にうちかとうと努力する〉とあります。
 フロムは、〈人類の歴史は個性化の成長の歴史であり、また自由の増大していく歴史である〉と述べています。さらに、〈われわれは一つの積極的な解答の存在すること、自由の成長する過程は悪循環とはならないこと、人間は自由でありながら孤独ではなく、批判的でありながら懐疑にみたされず、独立していながら人類の全体を構成する部分として存在できることを信じている。このような自由は、自我を実現し、自分自身であることによって獲得できる〉とも述べています。つまり、〈積極的な自由は全的統一的なパースナリティの自発的な行為のうちに存する〉とフロムは考えているのです。
 そこでは、〈人生の意味がただ一つあること、それは生きる行為そのものであること〉が示され、〈自我の実現としての積極的な自由は、個人の独自性を十分に肯定する〉とされています。〈人間は自分自身よりも高いいかなるものにも従属してはならないということは、理想の尊厳を否定しはしない。反対に、それは理想をもっとも強く肯定することである〉と述べられています。そして、〈真の理想とは、自我の成長、自由、幸福を促進するすべての目標であり、仮想の理想とは、主観的には魅惑的な経験(服従への衝動のように)でありながら、じっさいには生に有害であるような、脅迫的な非合理的な目標と定義するにいたる〉と語られています。
 フロムは、〈もし人間の自由が......への自由として確立されるならば、もし人間がその自我を十分に妥協なしに実現できるならば、かれの社会的な衝動の根本的な危険性は消滅し、ただ病人と異常人だけが危険なものとなるであろう〉と述べています。〈積極的な自由は、能動的自発的に生きる能力をふくめて、個人の諸能力の十分な実現と一致する〉とされています。〈デモクラシーの未来は、ルネッサンスこのかた近代思想のイデオロギー的目標であった個人主義の実現にかかっている〉とあります。
 その実現の基準として、〈自由の勝利は、個人の成長と幸福が文化の目標であり目的であるような社会、また成功やその他どんなことにおいても、なにも弁解する必要のない生活が行われるような社会、また個人が国家にしろ経済機構にしろ、自己の外部にあるどのような力にも従属せず、またそれらに操られないような社会、最後に個人の良心や理想が、外部的要求の内在化ではなく真にかれのものであって、かれの自我の特殊性から生まれてくる目標を表現しているというような社会にまで、デモクラシーが発展するときにのみ可能である〉とあります。さらに、〈自由の実現の唯一の標識は、個人が自分の生活および社会の生活の決定に積極的に参加しているかどうか、しかもこれがたんに投票という形式的な行為によってだけでなく、日々の活動において、仕事において、他人にたいする関係においてもなされているかどうかということである〉とあります。

 

第二節 『人間における自由』
 『人間における自由』は、フロム自身によって『自由からの逃走』の続編であることが明言されています。
 この著作の中で、〈実に自由は、徳の必須条件であるとともに幸福の必須条件である。しかし、その自由は、気ままな選択をゆるす能力という意味でもなく、また必然からの自由というものでもなく、人間が、可能性として持っているものを実現する自由であり、人間存在の法則にしたがって、真の人間性を充実する自由である〉と定義されています。

 

第三節 フロムの「自由」についての考察
 フロムは、自由を消極的な「・・・からの自由」と積極的な「・・・への自由」に分けています。自由は徳と幸福の必須条件だと考えられており、フロムは積極的な自由の完全な実現へと進んでいきます。
 フロムの言う積極的な自由とは、個人的自我の実現であり、個人の諸能力の表現であり、個人の独自性の肯定であり、全的統一的な個性の自発的な行為のことです。つまり、人間の可能性を実現する自由であり、人間存在の法則により真の人間性を充実する自由だとされています。
 フロムにとって人類の歴史は、個性化の成長の歴史であり、自由の増大していく歴史なのです。この自由は、伝統をかなぐり捨て、人間が自身より高いものに従うことを拒みます。自由が実現した社会とは、個人主義が実現しデモクラシーが発展しており、個人が自己の外部に従属せず、自我の特殊性によって生活の決定に参加する社会のことです。それが妥協無く実現できたとき、病人と異常人の危険性を除き、社会的衝動の根本的な危険性が消滅すると考えられています。
 フロムは、自由の成長過程が悪循環にはならず、人間は孤独にもならず、懐疑に陥ることもなく、独立していながら人類全体を構成する部分として存在できると信じているのです。
 以上を考慮し、フロムの自由について考えてみます。
 フロムの述べている自由は、具体性を欠いた抽象的なお題目です。具体性を示さないその手法によって、いくらでも中身の無い空虚な綺麗事をわめき散らすことが可能になっています。
 つまり、フロムは自身の肯定する自由の内容について、具体的に語れないのです。語ってしまうと、それに対する反論がなされてしまうため、自由の肯定が不可能になってしまうからです。フロムの著作に具体的な自由の内実がない、そのことの異常さに気づいた者は、フロムの自由に賛同することができません。この異常さに気づかない者だけが、フロムの自由に賛同できてしまうのです。
 仮にフロムの積極的自由を目指した場合、社会は壊滅的で致命的な被害を受けます。なぜなら、自身の外部を認めず、伝統を投げ捨ててしまうような自我は、自身の欲望を撒き散らすことに終始するからです。歴史の縦軸(過去→現在→未来)と横軸(私の周りの人たち)を排除するとき、人間は、自己の欲望を独善的に振りかざします。人間存在の法則により真の人間性を充実する自由とは、そんなものなのです。

 

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