2019年1月アーカイブ

 とても分かりやすくて面白いです。スラスラと読めます。

 もちろん、細かいところに異論はあるのですが、そこに突っ込むのは野暮だなというほどの出来です。50冊中21冊は読んだことがありました。残りで面白そうなのがありましたので、3冊くらい買って読もうと思いました。 松原 隆一郎『経済学の名著30 (ちくま新書)』が学問的だとすると、こちらはより一般向けな感じですね。分かりやすさと面白さを優先するならこちらがお勧めです。厳密性を追従するなら、紹介されている本そのものや、他の評論も読む必要があると思います。




 マルクス・ガブリエルについての特集です。全体的に、肯定的な見解はつまらなく、否定的な見解が面白いです。なぜなら、肯定的な見解は根拠が曖昧であり、否定的な見解は論理が明確だからです。

 文句なく面白かったのは、以下の3つの論稿です。



・『我々の宇宙を超えて』 野村泰紀
 →説明も分かりやすく、単純に宇宙論として興味深かったです。

・『リアリズム論争のために 分析哲学のドイツ的総合の惨めさについて』 小泉義之
 →切れ味が凄まじいです。大変面白いです。

・『物理主義を論駁することの難しさについて』 太田紘史
 →こちらも否定的な見解の論稿。やはり、論理の鋭さが面白いです。



 ちなみに、私自身はマルクス・ガブリエルの哲学はかなりいかがわしいと感じています。大まかにいうなら、「存在するとは、意味の場のうちに現象すること」という点と、集合論のおかしな利用という点が問題です。前者は、意味論と存在論を曖昧に結び付けており、その差異にも関わらず、なぜ単純に結び付けて論じられるのか不明瞭だと感じられます。後者については、小泉義之さんの論稿の論理が非常に参考になります。全体という概念を論じるにあたり、自己言及のパラドックスを悪用しているように感じられます。