2012年7月アーカイブ

 今回のわしズムは、「古事記りばいばる」です。どの執筆者の古事記の解説もたいへん面白いです。
 まずは、ゴーマニズム宣言「国生み神話」です。古事記のエロって、いいですね。正直、『前夜 ZEN-YA 』におけるエロは受け入れがたかったんですが、今回のような知的なエロは良い意味でのスパイスになっていると感じました。イザナギの言葉を、原文の読み下し文で紹介したところはすごいですね。絵と文章の相乗効果で、えらいことになっています(笑)。「別天神」を絵で表現したところも個人的にすごく好きです。
 「天孫降臨」は、神様たちの表情が素晴らしいですね。特に、「正勝吾勝勝速日」の小物っぷりとか、「ホノニニギ」のニカッとした笑顔とか最高ですね。
 学者先生方のユーモアあふれる解説も見事です。特に、高森先生の「『古事記』リバイバルの千三百年史」は、締めの役割をしっかりと果たしています。やっぱり、本居宣長は天才だわ。最後の、〈面白いわけだよ。〉という意見も、ここまで古事記の解説を聞いていれば、「そりゃそうだよ。面白いわけだよ」と思わず返してしまいます。
 編集長インタビューでは、参議院議員の林芳正先生の人柄が見えてきます。正直に言って、よしりん先生の政治家を見る目は、今までの経緯からあまり信用してないのですが(笑)。少し前に、原口よいしょしてたりね・・・。でも、林議員には期待したいと思います。
 若手では、古市憲寿さんや中野剛志さんの論考が、きらりと光っていますね。
 西尾幹二の論考は、親米保守を痛烈に批判していますが、一言足りない気がします(苦笑)。
 個人的にすごいなあと思ったのは、「十万年の神様」を打ち切ったところです。英断だと思います。正直、面白くなかったし、先も見えなかったですもん。あと、『卑怯者の島』は発表する予定があるそうで、それはすごく楽しみです。

   『高橋是清 日本のケインズ―その生涯と思想』を読みました。若干ですが、アメリカ人だからだと思われる意見がありますが、基本的に良く調査して書かれた良書だと思います。
 素晴らしいところを挙げると、 p.345に〈高橋は、西洋諸国によって繰り返し展開される日本と日本人に対する蔑視を他の日本人以上に不快に思っており、英米の価値観を卑屈に擁護していたわけではなかった。むしろ、英米の資本と産業の底力を理解していた堅実な現実主義者であった〉とあります。この点を冷静に指摘しているところに、著者の誠実性を感じることができます。
 また、 p.379の〈高橋は、ケインズ自身がそうであったように、ケインズ主義者であると同時にハイエク主義者でもあった〉という意見も抜群です。ハイエクの提案は、経済において、ある特定の場面では有効に働くこともあります。ですから、経済において時としてハイエク的な提案を行うことは十分にありえるのです。
 ただし、常にハイエクであること(ハイエク主義者であること)は病理です。高橋は、もちろん、そんな病理にはかかっていません。 p.386の注にあるように、〈高橋は、ケインズ同様に、自由な市場と政府の影響力の強い経済の中間的な経済の提唱者であった〉わけです。 

 本書は、1987年に刊行された『近代経済思想』の加筆・訂正版です。
 西欧における経済の流れが、適切に要約されて論じられています。内容がしっかりしているので、大きな批判点が見あたらないのが素晴らしいですね。
 明確に内容や意見に同意できる本に対しては、付け加えることがないので、感想も少なめになってしまいますね。