2012年4月アーカイブ

 本書は、前作の『炎の陽明学 -山田方谷伝-』の続編です。内容的には前作と重なる部分も多いですが、たいへん面白くて前作同様に読む価値ありです。
 第一部は「ケインズに先駆けた日本人」です。p29に、〈山田方谷は儒教から資本主義を学んだ。「カネ」の流れが軽やかに遅滞なく行われれば経済は黙っていても発展するという資本主義の根本原理を熟知していた。これが方谷革命の謎を解明する最大のキーポイントなのだ。〉とあります。ワクワクしますね。p41には、〈山田方谷の公共投資をケインズ経済学のレンズをとしてながめる時、あまりの符号に舌をまかずにはいられない。〉とあります。具体的には、p50に〈低迷する経済に活力を与えるために、大規模な公共投資にふみきった。誰もが無謀とさえ思う膨大な資金を投入した、ケインズの不況対策の一つである公共投資が、方谷の企業手腕によって、短期間の間に、みるみる巨万の富を築く様は、サクセスストーリーそのものである。〉という記述が挙げられます。新自由主義の破綻が誰の目にも明らかになった現在、ケインズや山田方谷の方法論に学ぶべき点は多いはずです。
 第二部は「方谷を支えた同志達」です。私は特に板倉勝静に心打たれました。勝静に救いの手をさしのべた人物として、土方歳三も出てきます。本物の武士の情にぐっときます。
 p136には、〈勝静は家臣達がことごとく感服するほどに辛抱強く流転の日々を耐えた。終ぞ愚痴らしい愚痴をこぼしたことがなかった。〉という記述には、偉大な人物にふさわしい描写がなされています。p140の、〈美しい。何と美しい透明な心と文字の持主なのだろうか。備中松山の鬱蒼とした雪の山中で、方谷は蝦夷からはるばると送り届けられた勝静の手紙を前にして驚嘆の衝撃に打たれた。〉という箇所には、もはや無粋な解説は必要ありません。ただ、読んでみてくださいとしか私には言えません。
 山田方谷は、本物の天才にして、本当に偉大な人物です。そして板倉勝静は、方谷と比して天才だと言うことはできませんが、秀才であり、本当に偉大な人物だと言えると思うのです。

 大傑作です。たいへん面白くて感動しました。
 例えば第2章に、次のような方谷と、主君・勝静のやりとりがあります。

 勝静は方谷の話を黙って聴いた。深くうなずき、次に、声をたててさわやかに笑った。
 「後日の証文としていただきたい。」
(中略)
 方谷は噛みしめるように、ゆっくりと言葉を切った。
 今度は世子の勝静が方谷の顔をまじまじとみつめる番であった。・・・・・・

 偉大な人物たちの、真摯な会話が交わされています。本当に偉大な人物とは、いかなる人たちなのかの実例が示されています。方谷と勝静のその後の運命は、すさまじい時代のうねりとともに進んでいきます。歴史の激流が、否応なく偉大な二人を特別な人生へといざなっていきます。
 山田方谷とは、本物の天才にして、本当に偉大な人物です。古今東西の歴史を眺めてみると、本物の天才も、本当に偉大な人物もたくさん見つけることができますが、両方を兼ね備えた人物というのは、非常に少ないことが分かります。その人類史レベルにおいて、方谷は希少な人物だと言えます。例えば、第3章のp.318の意見書など、絶品です。第4章のp.401の、弟子である河井継之助の碑文を依頼された時に送った一句、〈碑文を書くもはづかし死に遅れ〉も、心ある者の魂に響きます。
 本書では、いくつもの場面で登場人物が涙を流しますが、これが本物の涙なのです。状況と人物が揃えば、ただ泣くしかない、涙を流すしかないという場面が生まれ、その場面においては、心ある人は涙を流すしかないという事実が示されています。その時の涙は、本物の涙であると思うのです。
 読む価値のある本なので、是非読んでみてください。もっと気軽に多くの人が読めるように、文庫化希望です。

『表現者42』

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 今号は、玉石混淆な印象を受けました。気になった論考にコメントしてみます。
・「巻頭連載 鳥兜」
 橋下市長の評価にはうなずけるものがあります。しかし原発問題に対しては、〈世界では三十カ国で四五六基の原子炉が稼働しており、中国やロシアなどの十五カ国でさらに六十三基の建設が進んでいる。脱原発はあきらかにこの流れに反している。〉という記述があり、驚きました。私は保守思想から、世の流れがそうだからといって、必ずしもそれが正しいとは限らないということを学ばせてもらったのですが・・・。脱原発を批判するなら、世の中の流れなどというものを持ち出すのではなく、納得できる論拠を示してほしいです。
・「榊原英資の日本改造論 日本人よ「グローバル戦国時代」を生きよ」
 状況認識は正しいとは思いますが、そこから発せられている提言に関しては、正直同意できないところが多かったです。〈平和憲法を変える必要はないし〉とありますが、何でやねん。
・「チベット僧の焼身「抗議」・春秋に義戦あり」三浦小太郎
 たいへん良い論考です。一読の価値ありです。
・「座談会 日本人よ、グローバルな「戦国」時代を生きよ」
 富岡さんの発言に、〈イラク戦争に対して明確に反対をしたのは、この「表現者」の前身である「発言者」なんですね〉とあります。そうなんですよね。他には、小林よしのりさんなどが挙げられます。その快挙があるため、今でも読み続けているんですよね。あのとき、日本の独立自尊の上で、イラク戦争に反対した人と、そうでない人に対し、自分の中で膨大な差ができてしまったんですよね。
・「愚かな投資立国論」柴山桂太
 なるほど、ですね。同意です。
・「ケレンと(しての)暴力」井口時男
 正直、よくわかりませんでした・・・。
・「日本のチベット化を狙う中国共産党」西村幸祐
 こちらもたいへん良い論考だと思います。チベット人の焼身による抗議は、人間が偉大でありえることを示した実例です。それに対し、その行為に反応しないほとんどの現代日本人は、人間の醜悪さの実例です。
・「いま問うべきは「独立の気力」」黒宮一太
 私は「絆」や「連帯」を連呼するのも少なくない意義があると思いますが、「独立の気力」について問うことには大賛成です。

以上、今号はこんな感じで。
  勧められ、借りて、本書を読んでみました。自分の高校時代の部活動を思い出しましたね。
 話が進むにつれ、主人公である新二が着実に人間的に成長しているのが分かって嬉しくなります。登場人物も、それぞれキャラが立っていて、話を読み進めていくにつれて好きになっていきます。
 最後まで読んでみて、ここで終わりかよ!というところで完結しており、その後が気になります。それも計算の内なのでしょうか。そうだとすると、作者はいろいろな意味で罪深いですね。
 本書は、新米女性首相が、時空の壁を越えて、日本の偉大な先人である高橋是清に国民経済や国家について学ぶSF経済小説です。非常に面白かったです。
 特に、第一章における、異なる時代のことを話しているのに会話がかみ合っているところが絶妙で美事です。日本の先人は立派だったのだなぁという感想を抱くと同時に、現代の日本人が過去から学ぶということをどれだけ疎かにしてきたのかを思うと空恐ろしくなります。
 p.222の是清の台詞に、〈欧米列強が自由貿易を主張するとき、彼らは原理原則に従ってそれを主張しているのではなく、彼ら自身の利益のために主張している〉という箇所が素晴らしいですね。是清の随筆録で、実際に述べている台詞だそうですね。
 本書を読むと、現在の日本のデフレの解決策は、すでに日本人の先人によって用意されていたことが分かります。それを見落としてきたことは、戦後日本の大きな過誤だったと言えるでしょう。戦後日本は、それまでの歴史を否定してきた側面があり、その弊害がはっきりと現れている例と言えるでしょう。
 映画化希望です。