『表現者39』を読みました。今号では、「「地域」をいかに復興するか」という特集座談会が面白かったです。いつもの座談会では、メンバー間でそれほど意見の相違は見られないのですが、今回はメンバー間にはっきりとした意見の相違が表れていて見応えがあります。各メンバーの意見について、簡単にコメントしていきます。
・佐伯啓思
脱原発に近い意見であり、全体の意見も一番共感が持てます。近代主義から距離を取り、日本の思想に基づいたあり方を模索しています。
・西部邁
今回の座談会では、いつもよりも意見の説得力がない気がします。原発に対する姿勢も、よく分からなかったです。
・中野剛志
いつもは中野さんの意見にはほとんど同意できるのですが、今回は言っていることが分かりませんでした。何を主張しているかは分かるのですが、その根拠に対し、納得できるだけの内容が提示されているとは思えませんでした。一部で佐伯先生と意見が対立し、切れ気味で発言していたように感じられました。プラグマティズムと言いますが、その定義が明確ではないので、自身の経験を一般化して語っているだけだという印象を受けました。
・中島岳志
この人はパール論争の経緯から、全然信用していません。ですが、今回の座談会に関しては、保守主義の原理原則からみた場合、筋が通った意見を言っていたと思います。
・富岡幸一郎
意見の根拠が示されていない感じです。〈長期的に見ても脱原発にいくのは問題がある〉という立場ですが、なぜそうなのか理由を言ってほしいです。脱原発よりの佐伯先生と比較すると、論理性が感じられないのです。
・柴山桂太
いつも思うのですが、柴山さんは反論が難しい話し方をしています。それはそれで素晴らしいのですが、本心がどこにあるのか見えずらいですね。
座談会以外に気になった論考についてもコメントしてみます。
・主権国家と地域主義(榊原英資)
著者が民主党よりなのかどうかは分かりませんが、ひどい内容だと思います。今現在EUで起きていることは、国を超えた地域統合の失敗例だと思うのですが・・・。それを真逆にとらえて、東アジア経済共同体構想を唱えるのは不誠実だと思います。
・脱北者の失われた故郷(三浦小太郎)
素晴らしい論考でした。短いですが、よくまとまっていて読み応えがあります。考えてみるべきテーマが示されています。
・原発は、議論以前に安全強化すべし(藤井聡)
この論考も、同意できませんでした。自動車のリスクと安全性を、原発のリスクと安全性と同じ視点で語ることには無理があると思います。この二つを一緒くたに論じてしまうと、他の様々な科学技術の擁護論に対して、悪用できてしまいます。ですから論じるべきは、自動車と原発の間で、同じとして言えることと、別だとして区別するその境界だと思うのです。その境界を論じることなく、境界を取っ払って意見を言われても同意できません。
以上、今号はこんなところです。また、次号が出たら感想書きます。
コメントする