『大停滞(NTT出版)』タイラー・コーエン

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 タイラー・コーエンの『大停滞』は、非情に分かりやすく重要な論点を述べています。現代経済学における良書と言えると思います。
 要旨は明確で、第1章の題名である「容易に収穫できる果実は食べつくされた」ということです。その果実とは、(1)無償の土地、(2)イノベーション、(3)未教育の賢い子どもたち、の三つです。なかなか説得力があります。
 素晴らしいところとして、論旨が絞られていて明確化されている点です。そのため、賛成できる理由も、反対できる箇所も簡単に指摘できるからです。例えば、p.56に〈既得権やコネや汚職やインチキによって、輸出の数字を高めることはできない〉という箇所は、些細な点ですが間違いだと指摘できます。正確には、「できない」のではなく「難しい」です。短期的には、それら不正な手段を政府が行うことで輸出を高めるたり、減り幅を抑制したりすることができます。もちろん、お勧めはしませんが。
 p.132には、〈さしあたりは、私たちが過去に経験したことがないくらい、景気後退長引くことを覚悟する必要がある〉とあります。私も、残念ながら、これは当たる可能性が高いと思います。そこで、さらなるイノベーションも重要なのですが、循環型社会における経済を模索すべきだと私は思います。

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