『哲学(中公クラシックス)』ヤスパース

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 ヤスパースの『哲学』を読みました。
 個人的見解ですが、人間的にはハイデガーよりヤスパースの方が好きですが、哲学的にはヤスパースよりハイデガーの方が好きです。
 ヤスパースの哲学には、キリスト教を前提としなければ成り立たない論理の飛躍が見られます。そこが魅力でもあり、批判できてしまうところでもあります。例えば51ページの〈かかる社会我として私はわれわれすべてとなる〉というところなど、ヤスパース特有の論理の飛躍が見られて嫌な感じがします。飛躍は飛躍でも、181ページの〈思惟の遂行が交わりを促進する程度に応じて、一つの思想は哲学的に真である〉などは、面白いと思えてしまいます。飛躍が隠された論理性に裏付けられている場合もあります。214ページの〈歴史性は合理的なものと形態化した非合理的なものとをみずからの媒介としてもっている。歴史性は非合理的ではなく、超合理的である〉という箇所は、しびれますね。
 哲学者の著作を読み、書かれている内容に一喜一憂するのは、とても贅沢なことです。その贅沢が味わえる本だと思います。

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