『文明の宿命(NTT出版)』

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 『文明の宿命』は、保守派の論客が3・11後の状況について論じた本です。主に、原発問題を中心に語られています。
 第1部は、国家についてであり、第2部は、危機をめぐってであり、第3部は、「人間の生」にかんしてです。ですが、はっきり言ってしまえば、第1部と第2部は、「反・脱原発論」を延々と述べているだけです。
 「反・脱原発論」の論理については、正直言ってがっかりです。一つ論拠を言うと、原発が戦争で攻撃の標的にされたり、テロの標的にさらされるという確率計算できないクライシスの問題について、「反・脱原発論」を唱える論者が語っていないのです。
 脱原発論者を批判している論考がありますが、その脱原発論者の書いている本を読んだなら、「反・脱原発論」者が、意図的に、「反・脱原発論」に都合が悪いから、戦争やテロの問題を論じていないのだと言わざるをえません。例えば、戦争やテロの問題を考慮すれば、自動車問題と原発問題を同列に並べて論じることは不可能です。
 この戦争やテロの可能性について唯一論じているのは、第3部の柴山さんです。それゆえ柴山さんは、「反・脱原発論」を展開せずに、原発を超えた電気の問題を論じています。非常にうまいなぁ・・・と思いますね。
 本書は、やはり第3部です。論理的および保守思想的に、検討に値すると思います。
 ちなみに私は、日本が脱原発に向かおうが、原発推進に向かおうが、得も損もしません。ですから、日本の子孫のために、論理的に筋が通った意見に従うだけです。本書を読んでみて、「反・脱原発論」には賛成できませんでした。

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