『分析哲学講義(ちくま新書)』青山拓央

| コメント(0)
 青山拓央さんの『分析哲学講義』を読みました。分析哲学の入門書として、分かりやすく正確に書かれていると感じました。
 私が個人的に見事だと思ったのは、「規則」に関する説明です。p.119の〈人々の答えは事実一致するのですが、その事実を支えるもの、たとえば共通した規則把握の機構は存在しません。そして規則というものは、このような一致が成立しているという事実を後追いするかたちで初めて、その存在が示されるものなのです〉という説明は素晴らしいと思います。p.121の〈規則や意味の同一性が実践の一致をもたらすのではなく、無根拠な実践の一致が規則や意味の同一性をもたらすのです〉という箇所も素晴らしいです。
 本書の終わり近くで提示されている「分岐問題」は、非常に面白い問いだと思います。私も色々と考えてみたくなりました。
 最後の著者の意見として、〈私が期待しているのは、皆さんが自分自身の問題をもつことです。研究者を目指すのでもない限り、独創性は不可欠ではありません。他人を論破する義務も、他人に評価される義務もありません。それよりもずっと大切なのは、興味のある問題に出会える運と、何らかの直感を伸ばすか刈るかを即断せずに考え続ける力です〉とあります。ごくあっさりと、良い意見だなぁ、と思えました。
 しかしですね、ここでいう「問題に出会える運」とは、「分岐問題」において、どういう形で位置づけられるのでしょうか?と考えてしまうのです。

コメントする