『コレキヨの恋文(小学館)』三橋貴明

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 本書は、新米女性首相が、時空の壁を越えて、日本の偉大な先人である高橋是清に国民経済や国家について学ぶSF経済小説です。非常に面白かったです。
 特に、第一章における、異なる時代のことを話しているのに会話がかみ合っているところが絶妙で美事です。日本の先人は立派だったのだなぁという感想を抱くと同時に、現代の日本人が過去から学ぶということをどれだけ疎かにしてきたのかを思うと空恐ろしくなります。
 p.222の是清の台詞に、〈欧米列強が自由貿易を主張するとき、彼らは原理原則に従ってそれを主張しているのではなく、彼ら自身の利益のために主張している〉という箇所が素晴らしいですね。是清の随筆録で、実際に述べている台詞だそうですね。
 本書を読むと、現在の日本のデフレの解決策は、すでに日本人の先人によって用意されていたことが分かります。それを見落としてきたことは、戦後日本の大きな過誤だったと言えるでしょう。戦後日本は、それまでの歴史を否定してきた側面があり、その弊害がはっきりと現れている例と言えるでしょう。
 映画化希望です。

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