『ニーチェの警鐘(講談社+α新書)』適菜収

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 哲学者の適菜収さんの『ニーチェの警鐘 日本を蝕む「B層」の害毒』を読みました。読みやすかったので、一気に読破しました。
 まず「B層」とは何かというと、p25に〈マスコミ報道に流されやすい『比較的』IQ(知能指数)が低い人たち〉とあります。思わず笑ってしまうのですが、p35に〈B層は絶対に反省することがありません。無制限に拡大した権利意識と被害者意識がB層の行動を規定します。郵政選挙で騙され憤慨し、再び民主党のマニフェスト詐欺に騙され失望し、将来にわたり「騙された!」と喚き続ける存在がB層です。〉とあります。そ、そんなはっきりと言わなくても・・・(ププッ)。
 ちょっと同意できない点としては、p53の〈今の世の中が肌に合わない人。今の世の中のどこかがおかしいと感じている人。今の世の中を深く軽蔑している人。そういう人はニーチェの言葉に耳を傾けてみるべきでしょう〉という意見が挙げられます。これは、諸刃の剣でしょう。ニーチェを読んで救われたと思った人が、ニーチェを誤解して、あるいは本当に理解して、より酷い社会不適合者になってしまう可能性はかなり高いわけですから・・・。他には、p62の〈B層の問題とは、すなわちキリスト教の問題なのです。〉というのは、さすがに一面的過ぎるでしょう。p65の〈B層が無知を自慢し、偉大な人物が死んでも「アタシ知らなーい」「誰それ?」などとわざわざネットに書き込むのは、彼らがキリスト教の影響下にあるからです。〉というのも、なんだかなぁ・・・という感じです。せめて、「キリスト教の影響がある可能性があります」程度にとどめておけばいいのに、と思ってしまいます。
 明確に同意できる意見としては、p68の〈まともな哲学者・思想家は、例外なく民主主義を否定しています。人類の知性は、民主主義と戦い続けてきたのです。民主主義は、十八世紀に発生したキリスト教カルトです。〉が挙げられます。素晴らしいですね。しみじみと、本当にその通りだなぁと思いますね。p82~83の〈わが国にも「民主主義には寛容の精神がある」「民主主義は少数意見を尊重する」などと言う人がいます。バカなんでしょうか? 民主主義に一番たりないのは寛容の精神と少数意見の尊重です。〉という点も、抜群に素晴らしいですね。私も、そのようなバ、ゴッ、ゴホンッ。そのような不思議なことを言う人を知っています。ほんの少しだけ考えてみれば、すぐに分かることなのに。
 本書は、人を選びます。人によっては、怒り狂う内容だと思います。この感想に同意点を見いだす人は読んでみることをお勧めします。この感想に怒りを覚える人は、読んでも無駄だと思います。

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