『自由と民主主義をもうやめる(幻冬舎新書)』佐伯啓思

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 佐伯啓思さんの『自由と民主主義をもうやめる』を読みました。何回も読みました。その上で、おそらく誰もしないであろう角度から、批判を行いたいと思います。
 まず、この題名は正確ではありません。P225に、〈「自由」と「民主主義」を無条件にりっぱなものだとして祭り上げるのをやめようということです〉とあります。P72には、〈民主主義や個人の自由も、基本的には大事だと思っています。そんなことはわざわざ言うまでもないでしょう〉とまで、佐伯さんは述べています。基本的には大事なものをやめる人はいません。すなわち、『自由と民主主義をもうやめる』という題名にも関わらず、佐伯さんは、自由と民主主義をやめてはいないのです。
 P227で佐伯さんは、〈本書は「自由や民主主義をやめる、などとんでもない」と思っている人に読んでもらいたいのです〉と述べています。そういう人は、安心してください。自由や民主主義を無条件にりっぱだと思うことはなくなるかもしれませんが、本書には自由や民主主義をやめるだけの理由は示されていません。
 ですから、本書に対して不満を持つ者は、「自由と民主主義をやめる、なんて当たり前じゃないか」と思っている人なのです。民主主義や個人の自由など、基本的に大事なものではないと思っている人は、本書とは異なる地点に立つことになります。例えば、私のように。
 日本の精神史を省みるならば、自由も民主主義も、基本的にはいかがわしい考えだと分かると思うのですが・・・。

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