『表現者46』

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 『表現者46』の特集は、「独立しない日本、共栄できない日中韓」です。今号は多角的な視点が見られて面白かったです。気になった論考にコメントしてみます。

<没落するのかヨーロッパ(榊原英資)>
 EUの危機にについて論じられています。p.013に、〈論理的解決策は二つある。一つは財政統合を進め、ドイツもギリシャも一つの国にすること、ヨーロッパ合衆国の創設だ。もう一つはユーロを解体するか、ギリシャのような弱小国をユーロ圏から出してしまうことだ。〉とあります。この解決策は、論理的にはその通りだと思います。
 榊原さん自身は、〈ヨーロッパ全体の没落が続くなかで、ヨーロッパ統合という決断をドイツ等がいつ出来るかが鍵になってくるのだろう。〉と述べています。いわば、前者の可能性に賭けているわけです。しかし、私には前者の可能性はほとんどありえないと思われます。自発的か強制かはさておき、まずはギリシャがユーロ圏から外れるのが最もありえる可能性だと予測しておきます。

<北朝鮮を生き抜いた二人の「日本人」(三浦小太郎)>
 この人の論考は、毎号感銘を受けています。〈彼を「名誉日本人」と呼ぶことに私は何のためらいもない。(p.014)〉という箇所に同意いたします。保守人権派とは、私の感性からすると、日本における儒教の流れをくんだ「人道」の立場とほとんど同じだと思います。今後の論考も楽しみです。

<反日デモの考察(柴山桂太)>
 柴山さんに関しては、毎号の論考のレベルが驚異的な水準に達していますね。p.067の〈中国にとって国内の日本企業は、ちょうどいい「人質」なのである。〉という意見や、p.068の〈中国の反日デモはこれからも続く。安易な幻想を捨て、日中関係の厳しい現実にもっと目を向けなければならない。〉という意見は秀逸です。経営者などは、特に心しておいてほしいですね。

<中国の悲劇(中野剛志)>
 中野さんの論考は、独自の観点に視点を置いて論じている場合が多く、なるほどと思わされます。p.085の〈中国こそ、グローバル化の最大の犠牲者である。〉という意見は、(その真偽はともかく)面白いですね。

<日本は伝統的な対中国政策に回帰せよ(東谷暁)>
 〈中国の経済成長につれて賃金は高くなってゆき、生産地としての優位性は失われてゆく。日本はかつての中国に対して一定の距離をおく伝統的外交に回帰すべきだろう(p.088)〉と述べられています。まったくその通りだと思います。

<中国自身のチャイナリスクにどのように対峙するのか(宮本光晴)>
 ちょっと・・・、論考のレベルとしてどうかと思います。
 例えば、p.091に尖閣問題について、〈日本と中国双方の侵入を禁じるという条件を提示したうえで、帰属を交渉することが考えられる。〉という意見があります。その後、中国が〈尖閣に一気に侵入するかもしれない。ゆえに尖閣への侵入を阻止する軍事力は不可欠であるが、そのうえで我に理があると、国際社会に向けて主張すればよい。〉と述べています。この人は、中国の実効支配を実現するための工作員なのでしょうか?
 他にも、〈中国人留学生を増やす必要がある。〉とも述べています。正直、この人の意見には同意できません。

<保守放談 iPS細胞を礼讃していいのか(p.145)>
 保守思想の面目躍如ですね。考慮すべき視点だと思います。

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