本書の言う左翼は、社会主義的な意味ではなく、もっと広い意味です。簡単に言うと、自由・平等・友愛・合理へ疑いを抱かない者たちのことです。
私も左翼には同意できないので、本書の内容はすんなりと頭に入ってきました。
特に注目すべきは、p.146の〈日本人のほとんどすべてが、あのアメリカの対イラク侵攻を是認したのでした。何という「思想のふしだら」といってやるしかありません。〉という言葉です。これは、本当にその通りです。あのイラク戦争に対し、どのような態度を取ったかということ、それが思想家としての格として現れているように感じられます。
p.255の〈つまり私は楽な亡命先を選んでいるわけですが、私のいいたいのは、日本という亡命先に恩義がある、その恩義に報いる覚悟はとうにできている、ということにすぎません。〉という言葉も、なんとなく分かる気がします。私にとって日本は、亡命先というよりは、やはり故郷という感慨なのですが、戦後日本に対して亡命先と言いたい気持ちも分かるんですよね。
p.266の〈言いたいことを言えるあいだは言う以外に、もうどう仕様のあるはずもありません。良かれ悪しかれ、「年を取る」とは嘘をつけなくなることだ、というのが私の場合です。〉という意見も深いです。確かに、そのように年を経る人がいるのでしょう。そのような人に対しては、敬意をもたざるをえません。
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