『これが日本経済≪世界「超」最強≫の仕組み』

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 三橋貴明さんと岩本沙弓さんの対談本です。経済について、色々と語られています。
 本書で感銘を受けた箇所を述べていきます。まず、〈ケインズ的なことを言うと、ケインズは古いとか言われます。関係ないだろう、古いとか新しいとか。なんでも新しいものが常に正しいのかと、言いたいわけです(p.35)〉と三橋さんが述べているところが挙げられます。まったくその通りですね。古いということが非難語になっているというのは、進歩主義という悪しき思想が蔓延している証拠です。古いものの中にこそ、価値あるものを見いだすのが日本人の本領でしょうに。
 次は、〈自由貿易というのは、基本的に昔は帝国主義者が使っていた言葉です。今もそうかもしれないけれど(p.70)〉という三橋さんの意見です。自由とか自由貿易って、たまたま大きな力を持つ側に立った者が、その大きな力でか弱きものを蹂躙するために利用するものだったりするんですよね。自由という言葉に対しては、その意味するところをよくよく考えてみることが必要だと思います。
 岩本さん意見では、〈結論としては、欧州はこの先失われた20年を経験しなくてはならないということにつきるでしょう(p.75)〉と述べているところが参考になります。それに対し、三橋さんは、〈失われた何十年(p.75)〉と返しています。欧州の事態は深刻です。その余波を、日本はどういなせるかが重要になってくると思われます。
 ちなみに三橋さんは、〈今だから論理的に説明できますが、ユーロが始まったころとか、大前研一氏がユーロを絶賛していたころとかは、誰も気づかなかったんですかね。私はそのことろを知らないんだけど(p.134)〉と述べています。参考までに、『表現者』の2012年09月号で佐伯啓思さんは、〈今日、われわれはこうしたEUの苦悶を目撃している。しかし実は、それはEU形成が具体化した時点で十分に予見できることであった。本当をいえば、何も今頃になってあたふたとするような事態ではないはずだ〉と述べています。
 三橋さんの発言で格好良いところは、〈国境とか国家を否定することは、最終的にはできないんです(p.170)〉と述べているところや、〈皇室否定派は「民主主義が決めたからいいんだよ」と言うかもしれません。民衆が総意に基づいて選択したからいいんだと。でも、そういうのは多数決で決めていい話じゃないですよ(p.255)〉という意見ですね。格好良いですし、まったく正論ですね。
 本書の中で、微妙に賛成しかねる箇所もあったのでいちおう述べておきます。p.294の〈日本は国全体の貯蓄率は、全然減ってない。家計の貯蓄が減っているように見えても、問題ないんですよ〉という意見です。企業の貯蓄と家計の貯蓄の総額が変わっていないから問題ないというのは、ちょっと違うのではないかと思います。家計は貯蓄を重視し、企業は投資を重視するのが健全だと思いますので、企業と家計の貯蓄の比率は考慮すべきだと思います。 

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