『保守の辞典(幻戯書房)』西部邁

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 本書は題名が『保守の辞典』ですが、辞典という観点から言うと少なくない問題点が指摘できます。

・言葉の定義以上のことが長々と語られていること。
・「伝統」という言葉で言えば、【はじめに】、【保守】、【伝統】、【公共活動】などで、少しずつ表現をかえて定義されていて、辞典としては構成がまとまっていないこと。
・辞典なのに、時制に即した表現が多いこと。例えば、アメリカの大統領がブッシュとして論じられている箇所がある。辞書なら、時制に影響されないような抽象的な表現を行うべきでは?

 辞典という観点から言うと、西部邁が以前に出した『学問(講談社)』の方がずっとふさわしいと思われます。119のキーワードが簡潔に論じられているからです。
 本書に書かれている内容はともかく、辞典という観点からすると、『保守の辞典』は辞典としては使いにくいと言わざるをえません。本書の内容は『表現者』に載っていたものですが、『保守の辞典』として単行本化するのでしたら、大規模な再構築が必要だったと思います。

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