『荒木飛呂彦の超偏愛!映画の掟(集英社新書)』荒木飛呂彦

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 本書は、漫画家の荒木飛呂彦さんの映画評論です。荒木さんの選ぶBest20も載っていて、面白く読むことができました。
 本書のすごさを個人的に言うと、少なくともBest3までは観てみたくなりました。Best20全部じゃないところが、逆にリアリティがある感じだと個人的には思うのだ。
 本書ではかなり謙遜していますが、荒木さん本人も破格な天才だと思います。例えば、〈ここまでの書き方からすると、僕がサスペンスの奥義を会得したかのように見えるかもしれませんが、そんなことはありません。いまだに優れたサスペンス映画を観ながら、自分も勉強している。今でもその途上にいます〉という台詞です。この言い方は、非常にうまいですね。
 さらに、あとがきでは、〈僕は、「人間」とは、家族や仲間、友人、恋人のことを何よりも大切にしている存在で、それこそが人生に目的を与えてくれるといってもよいと思っています。しかし、何かとても大切なことを決断するとき、あるいは病気になったとき、お腹が空いたりしたときには、結局のところ人間は「ひとりぼっち」なのです〉とあります。うん、天才だ。
 荒木さんは、〈「ひとりぼっち」でいることの恐怖に打ち震えるからこそ、人は、身近な付きあいから人類の共存共栄、平和まで、あらゆる人間関係を大切に考えます〉と言い、続けて、〈そしてそこに、サスペンス映画やホラー映画が存在する哲学的な意味もあるのだと思います。それらはときに、人間に与えられた恵みにさえ感じます〉と語っています。ここには、破格なレベルに達している感性と知性の融合がみられます。天才の語る言葉の妙味を味わうのは、贅沢なことだと思います。

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