『世界を変えた経済学の名著』日本経済新聞社=編

| コメント(0)
 日本経済新聞「経済教室」面に「やさしい経済学―名著と現代」と題して2007年1月から7ヶ月間にわたって掲載されたシリーズの文庫版です。
 良くも悪くも日本経済新聞社的と評したいところですが、はっきり言うと、悪い意味で日本経済新聞社的な内容です。18名について解説がなされていて、良い論考もあるとは思いますが、なんだかなぁと思う論考も多いのが実情です。
 例えば、8章のヒュームの『人性論』の解説には、〈談合を和の論理で正当化する人は、消費者や国民をないがしろにしてはばからない。独占禁止法や談合防止法が必要な所以である(p.142)〉とあります。うんざりですね。談合は絶対悪なんでしょうか・・・。当たり前の話ですが、談合に限らず、世の中の仕組みのほとんどは、功罪を併せ持っているわけです。談合という制度が、独占を防ぐ役割を担っていたという側面もあるわけです。ヒュームは私の好きな人物の一人なのですが、その解説でこんな低レベルな意見を聞かされるとうんざりしてしまいます。
 また、13章のケインズの『雇用・利子および貨幣の一般理論』の解説もひどいものです。ケインズの解説を読もうと思っているのに、突然に〈筆者の考えを述べてみたい(p.220)〉と勝手に自分の考えを語り出しています。うんざりです。その考えも、〈支出が乗数効果を生むなら、税負担は同規模のマイナス効果を生むはずである(p.220)〉という杜撰な論理で、公共投資を批判しているのです。もう「日本経済新聞」という名称は止めにして、「原理的新自由主義新聞」に変更すれば良いのではないでしょうか(投げやり)。

コメントする