『反動世代 日本の政治を取り戻す(講談社)』

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 本書は、現代日本の40代で類い希なる知性を持つ4名(中野剛志、三橋貴明、柴山桂太、施 光恒)が集結している大変贅沢な一品となっております。たった4名と侮ることなかれ。団塊の世代で言えば、その数の多さにも関わらず、真に恐るべきは佐伯啓思さん1名くらいなのに対し、40代の層の厚さには頼もしさを覚えます。しかも、各4名のそれぞれが、確固としたキャラクターを持っており、今後の活躍に期待が持てます。
 インタビューをしている森健氏が、〈筆者の関心は彼らの志向性が奈辺にあるのかにもあった。なぜ言論活動に取り組もうとし、何を動力として活動するのか。それもまた疑問の一つだった〉と述べているように、4名の言論に対する姿勢はそれぞれに異なっています。

 中野さんは、〈僕にとって最悪なのは、自分をごまかして死ぬことで、それだけはいやでした〉と述べているように、中野さんの姿勢は、自分に正直に生きることに重点が置かれているのだと思われます。

 三橋さんは、〈単に嘘つきの評論家がムカつくんですよ。だって、明らかにおかしいんですから〉とか、〈私はIT営業時代から、人にわかりやすく噛み砕いて伝えるのに人生懸けてきた〉などと語っています。三橋さんの姿勢は、嘘つきを論破し、正しいことを分かりやすく人に伝えることに重点が置かれていると思われます。

 柴山さんは、〈いかんせん慎重で遅筆なうえ、複数の視点をつなごうとするので、どうしても時間がかかるんです〉とか、〈自分としては、現実を論評するときには、できるだけどんな時代でも通用するような不動の核、社会を見る確かな目に行き着きたいという意識があった〉と述べています。柴山さんの姿勢は、整合性のある理論を示すことができる思想に重点が置かれていると思われます。

 施さんは、〈私の関心は、本当に日本に根付いている伝統、慣習、文化の中には社会をよくする方向性があり、それを見つけて伸ばしていくべきというスタンスなんです〉とか、〈自国の文化伝統と近代的ないしは欧米的と言うべき、政治経済システムをうまく折衷し、外来の知を翻訳し、土着化して近代化に役立てる〉などと語っています。施さんの姿勢は、各国ごとの文化に根付いたあり方を、日本は日本の伝統に合ったあり方を目指すことに重点が置かれていると思われます。

 最後のあとがきに相当する部分では、三橋さんが、〈ここにいる五人はみんな死ぬんですよね。十年後、みんな生き残っていないですよ〉と述べています。あと一人は、藤井聡さんです。そのセリフに対し、中野さんが、〈たしかに生命的に殺されることはないでしょう。でも、言論的に抹殺される可能性はある〉という考えを示しています。確かに、彼らの言論は、正しいが故に、卑劣な者たちの反感を買う恐れがあります。私は、彼らの言論活動が功を奏し、順当に5名とも10年後も元気に言論活動を続けていることを期待しています。

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