本書は、日本の経験を通じて金融政策について論じられています。その上で、アメリカのバーナンキやグリーンスパンが徹底的に批判されています。その批判は筋が通っていると思います。
特に以下に示す記述などは、参考になると思います。
<p.87>
長期金利の低下も円安も、それ自体が目標ではなく、デフレ脱却のための手段である。デフレ脱却に役立たないとするならば、意味がない。
<p.104>
ただし、需要と供給の区分は説明の便宜上の話であり、賃金引き上げを単純なコスト・プッシュと考えるのは必ずしも正しくない。賃金の上昇は労働者の所得上昇を意味するので、需要を増加させる効果を持つ。賃金上昇は需要サイドからのインフレ圧力も作り出すのである。逆に原油価格の高騰は外国への所得流出をもたらし、需要を減少させる。費用を引き上げる点では同じでも、需要に与える効果は正反対である。
<p.116>
この輸出増加に対して、円安政策が一定の意味を持ったことを筆者は否定するものではない。
<p.155>
量的緩和政策はデフレ克服には役立たなかったとしても、破綻が懸念される日本の財政を下支えする効果を発揮したと言える。
<p.174>
こうして輸出(輸入削減)主導型の景気下支え政策は、世界同時不況を悪化させるであろう。
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