『危機・不安定性・資本主義 ハイマン・ミンスキーの経済学(ミネルヴァ書房)』服部茂幸

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 本書は、ハイマン・ミンスキーの経済学を基に金融について論じられています。ミンスキーの考え方には、参考にすべき論点が含まれています。参考になると思われる箇所について、以下にいくつか挙げてみます。


<p.14>
 ミンスキーは「資本主義の多様性」を強調し、状況によって望ましい政策は変わると主張してきた。ミンスキーが今生きていたら、昔と同じ主張をしたとは限らない。


<p.38>
 標準的ケインズ解釈の欠陥は、貨幣、不確実性、資本主義経済の不安定性の三点を理解できていないことにあるとミンスキーは考えた。もっとも、この欠陥は本来、均衡論的な経済学が持つ欠陥である。


<p.99>
 ミンスキーは金融システムの安定性は安全性のゆとり幅によって決まると論じる。それは、現金の受取に対する負債の支払い負担、負債額に対する正味資産もしくは自己資本、現金もしくは流動性資産に対する負債の比率によって示される。具体的な指標には違いがあるが、何れも負債の負担度を示していることには違いがない。


<p.102>
 金融不安定性仮説は、景気循環に同調する信用の拡張・縮小によって、バブル、バブル崩壊、それにともなう金融危機、経済停滞という一連の過程を説明する。


<p.171~172>
 ミンスキーは財政赤字は利潤を下支えすると論じていた。ミンスキーの意味では財政政策の効果は大きかったと言える。
 ミンスキーは予防策も無視したわけではない。彼は金融規制と金融政策によって、ポンツィ金融の拡大を抑えるべきだと論じていた。もっとも、金融の技術革新は旧来の規制を空洞化させるから、実際にそれを達成するのは困難であると考えていた。


<p.254>
 ミンスキーによれば、市場に任せるべきものと、任せるべきではないものが存在する。そして、市場がうまく機能するためには、政策によって市場の失敗、暴走を抑えなければならない。したがって、市場の失敗や暴走を押さえることができる経済学のみが役に立つ経済学である。他方、市場を擁護する経済学は市場の失敗や暴走を食い止める手段を持たない。その結果、市場が暴走し、自滅する。これは新自由主義経済に対する原理的な批判である。

 

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