本書は、中野剛志さん・柴山桂太さん・施光恒さんという現代日本を代表する知性が、会話形式で新自由主義やグローバリズムの欠陥を徹底的に曝いていくという作品になっています。
非常に分かりやすく、さくさくと読めました。三者の格好良い台詞を紹介してみます。
「中野剛志(p.038)」
もし、自分がソニーの会長だったら、今、外国人移民を大量に採用する。今、儲けるために移民を入れよと。10年後、ソニーがなんの技術開発もできない凡庸な会社になっていても、俺は知ったことかと。あと、2、3年で引退だ。それまでの間、利益を出して株価を上げて、自分が有能な経営者としてチヤホヤされればいい――つまり、すでに金持ちの人間がもっと金持ちになるための政策なんです。
→ 同意です。今の団塊の世代当たりって、だいたいこういった思考パターンだと思います。大東亜戦争を否定し、祖父母の世代を貶めてきた世代が、子や孫の世代のことを考慮するわけがないですからね。
「柴山桂太(p.041)」
「アジアの成長を取り込む」というおきまりのフレーズも、なんとかしてほしいですね。帝国主義じゃあるまいし、「取り込む」ってなんなのか。実に「内向き」な、品のない言葉だと思いますね。
→ 同意です。これに類似した台詞って、けっこういろんなところから聞こえてきますよね。そういった奴らは、下品な奴らだなぁと内心で見下しておきましょう(笑)
「施 光恒(p.120)」
日本語の曖昧さが良くないという意見をわりと聞きますが、曖昧なことを表現できるのが複雑な言語であり、そこに文学や芸術、学問の成立する余地があるんですけどね。
→ 同意です。まったくその通りだと思います。もう少し補足すると、日本語は曖昧な表現も、厳密な表現も可能だということです。そうでなければ、日本が翻訳大国になっているはずはないのですから。ですから、日本語の曖昧性を否定的に述べる者は、単にその人が曖昧なヤツで厳密な表現能力がないってことを自分で証明してしまっているのですよね。
あと、本書のテーマを軽く飛び越えていますが、柴山さんの言葉で凄まじい箇所があるので紹介しておきます。
「柴山桂太(p.136)」
西欧近代が生み出した三代イデオロギーは自由主義、社会主義、保守主義で、これらが状況に応じて敵対したり協調したりしながら各国の政党政治を動かしてきた。つまり、この三つははっきり分かれるものではなくて、ボロメオの輪のようにつながった部分があるということです。
→ これは、何気ない一言のように思えますが、凄まじい論点を適確に示しています。新自由主義がマルクス主義のように打ち捨てられた後の新たな世界秩序において、けっして無視できないテーマが含まれています。こういった意見を淡々と述べているという点をみても、私なんかは柴山さんに畏怖を覚えてしまいますね。
「柴山桂太(p.176)」
今の段階では答えはないんですが、通貨論は21世紀の経済思想で必ず問題になってくると思います。
→ これも、極めて重要で適確な指摘です。新自由主義の問題点は本書で論じられていますが、その後の世界を考える上で、通貨論は今から考えておくべきテーマです。新自由主義やグローバリズムがおかしいのは分かりました。では、通貨制度は如何にあるべきか? その答えは、まだこの世界には用意されていないのです。どうです? 恐ろしくはないですか?
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