『築土構木の思想(昌文社)』

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 本書は藤井聡さんが、気鋭の論客たちと築土構木について対談したものをまとめたものになります。

 公共投資などの重要性を認識している人には、その論理を強化・補完してくれるでしょう。

 公共投資など無駄と思っているけど、異なる意見も見てみようとしている人にも参考になるでしょう。

 公共投資が無駄なことは普遍的な真理だと信じ込んでいる人には、本書を読む意味はないでしょう。


 対談者の発言で気になったところにコメントしてみます。


<中野剛志さん>
 だけれども、1週間たっても食べ物が来ないとか、事態が好転しない可能性が高いとわかっていれば、それは私だって、お父さんとして家族を守るためには略奪くらいしないといけない(笑)。

→ きわめて重要な視点です。ここの判断を理解できるかどうかは、思想をする上で決定的に重要です。


<柴山桂太さん>
 
 実体経済が主役で金融経済がそれを支えるというのが本来あるべき姿ですが、今は金融経済の方が実体経済を振り回している。この構図を、国レベルでも世界レベルでも元に戻さないといけない。このとき政府の公共投資は、うまくやれば大きな力になり得ると思いますね。

→ まったく同感です。


 低成長が続いていることで、よく成長戦略が必要だと言われます。もちろん成長も大事なんですが、それよりも今後、発生がみこまれる経済ショックに対して強靭な経済社会を構想するのが、いまの日本だけでなく、世界全体の課題だと思います。

→ まったく同感です。


<三橋貴明さん>
 特定の仮定に基づくモデルや数式をつくって称賛されるって、めちゃめちゃ虚業ですよ。特定環境でしか成立しないモデルを作ってノーベル経済学賞とか言っているわけですから、バカバカしい限りです。そんなものに影響されて、世界中が大混乱というのが、現実の世界です。

→ その通りだと思います。


 とりあえず、カタカナ用語を使う人は信じない。これ、重要です。例えば、コンセッション方式とか。グローバリゼーションとか、イノベーションとか。

→ アニマル・スピリットは?(笑)


<大石久和さん>
 私自身が現実に経験したことなんですが、現場服を着て現場に立っている私のそばを、小さな子どもを連れたお母さんが通りかかって、「勉強しないとああいうことになるのよ」と言っているんですよ。本当に。現場で汗をかいて太陽のもとで働くという、こういう行為に対してなんという教育をしているんだ、これをやっていることが暮しにどう役立つのかと言うことを十分考えもせずに、子どもにそういうことを言うなんてひどいことだと思いました。

→ これ、ひどい話ですよね。私もヘルメット被って安全靴はいて現場に入ることがあります。現場の仕事で、現場の作業員が頑張って日本の安全を支えているわけです。ですから、こういうことを言う女って大嫌いですね。


 まん丸くて輪郭がきっちり出てる月なんてよくない、雲がかかっている状態がいいんだ、という曖昧模糊とした世界をよしとする情緒と言語を育てちゃったわけですから、われわれは論理を育てられなかった。

→ ここは本書の中ではめずらしく同意できない点ですね。曖昧模糊というより、これは極めて繊細な表現なわけです。そういった優美な表現ができるということは、極めて高度な論理性があってこそなのです。この意見には、まったく同意できませんでした。


<青木泰樹さん>
 私は「カネよりも命が大切だ」なんてことまでは申しませんけれども、少なくとも、「カネも大事だけれど、命のほうも大事じゃないのか」と言いたい。なんとか「リスク分散」と「経済効率の追求」の折り合いをつけて、「経済効率の追求」は程ほどにして、安全性、国土強靭化のほうもやってほしい。そういう政策転換を望んでいるところです。

→ この言い方、素晴らしいですね。これぞ大人の話し方だという見事なお手本だと言えます。


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