『表現者57』

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 本号は良記事が多かったのですが、中でも群を抜いているのが西部邁氏の『憶い出の人々』です。戦後日本に稀有な思想家をして、この時このタイミングでしか書けない凄烈な作品に仕上がっていると思います。内容についての評価は畏れ多くてとてもできません。ただただ、とてつもない作品だと言うしかありません。それ故、安易な推薦も難しい作品となっています。読む者にも覚悟が求められると思うからです。

 以降、気になった記事についてコメントしてみます。


<第一次世界大戦の教訓 ―グローバル化が引き起こした戦争>柴山桂太

 グローバル化の下で新興国の経済危機が頻発し、経済危機が大国による直接・間接の帝国主義的な介入を招く。そして帝国主義的な介入が、大国間の地政学的な対立を激しくする。百年間のグローバル化は、そのようにして世界を破滅に追いやったのだった。同じ構図が現代でも繰り返されるのだとしたら、この百年、人類は何一つ進歩などしてない、ということになる。

→ 非常に重要な警告だと思います。


<「歴史の終わり」から「文明の崩壊」へ>佐伯啓思

 端的にいえば、国際的投機資本から国内の雇用と生産を守り、新帝国主義的進出から国境を守り、資源の自給的な確保を目指すほかない。これはあくまで国民国家の枠組みを保守し、その安定化をはかることなのである。それだけが、今日のグローバル文明の崩壊から多少は身を守ることになるのであろう。

→ これも重要な指摘です。現代におけるグローバリストと、如何に戦っていくかがカギになりますね。


<保守放談 泥沼化するイラク>

 今の混乱に比べれば、フセイン体制の方がまだ秩序が保たれていた。宗派や民族が複雑に入り交じった人工国家では、独裁が必要悪となることもある。そんな当たり前の認識も持たずに、イラクを侵略したアメリカの罪は重い。アメリカの尻馬に乗って、イラク攻撃を正当化した日本の自称保守派も同罪である。

→ まったくその通りだと思います。


<シュタージ崩壊の顛末>クライン孝子

 そうと知りつつ、なぜドイツは、被害者ぶって米国を責めたてたのだろうか。
 答えは簡単で、被害者ぶること、これまさに情報作戦のノウハウの一つだからである。

→ 重要なポイントです。このノウハウが在るということを、しっかりと認識しておくべきでしょう。


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