『ブレトンウッズの闘い(日本経済新聞出版社)』ベン・ステイル

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 本書は、ブレトンウッズ会議におけるケインズとホワイトを中心人物とし、その攻防を描いたものになります。

 エコノミクスとしての経済学では、ケインジアンという言葉が特別の意味を持っているようです。ケインズは参照に値すべき人物だとは思いますけどね。本書では、ケインズの幻想を打ち砕く役割もあるかもしれません。本書を読めば、ケインズも時代の流れに翻弄された人物の一人だったことが分かると思います。

 一方、ソ連のスパイだったホワイトは、不気味です。ソ連はホワイトを手先として、日本がアメリカを攻撃するように仕掛けたと記されています。計画名は「スノー作戦」で、スノーはホワイトを意味しているそうです。

 p.81に、次のような記述があります。


 ホワイトはすでに紹介した衝撃的なメモを起草して、六月六日にモーゲンソーに提出した。このなかでホワイトがアメリカ外交の弱腰を幅広い視点から攻撃していることはすでに紹介したが、それ以外には二つの国、すなわち日本とソ連に関して具体的な提案も行っている。ソ連を取り上げた部分では、独ソ不可侵条約が破棄されるには経済的な誘因が必要だという点に注目している。そして日本を取り上げた部分では、日本との包括的な和解が提案されている。日本が中国とインドシナから兵力を撤退させて治外法権を放棄すれば、それと引き換えに政治経済に関して若干の譲歩を認めるという内容だった。ホワイトがどう考えていたかはわからないが、このような要求は非現実的で、日本がとても受け入れられるものではなかった。しかし少なくともソ連の諜報機関にとっては、それがねらいだったのである。


 ケインズがブレトンウッズに実際に残した痕跡はわずかなものですが、ケインズがブレトンウッズに臨んで用意した案そのものは、かなり参考になります。理論面においては、ケインズ案の方がホワイト案よりも優れていたと言えると思います。しかし、問題は政治の舞台であり、イギリスよりもアメリカの方が圧倒的に力があったということです。p.200には、次のように記載されています。


 結局、戦後に世界の国々が必要とするのはドルであり、いくらケインズが聡明でも、ミダス王にはなれなかった。


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