『日本思想全史(ちくま新書)』清水正之

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 題名からしてすごいですよね。『日本思想全史』ですよ。全史って言い過ぎだろうと読んでみたのですが、理由がはじめに説明されていました。


<p.13>
 タイトルを全史としてのは、日本の思想をつかむために、古代から近代までの代表的な思想、思想家、思想的作品を対象とすることからであるし、他方、よくあるような学派や学統を重視する個別思想史ではなく、通有する基盤に着目した思想史を目指したからである。


 日本思想には長い歴史がありますから、この分量にまとめるのはそもそも無理があるわけです。ですが、それにも関わらず、しっかりとまとまっていると感じました。もちろん、その分量には差があります。かなりしっかりと論じられているところもあれば、主要人物を羅列したような箇所もあります。

 個人的には、『愚管抄』や『神皇正統記』の解説は面白かったです。他にも、法然の「選択(せんじゃく)」や藤原定家の「有心(うしん)」、『どちりいな』の「愛」など非常に興味深いですね。

 記述にも公平中立を心がけていることが分かります。それにも関わらず、文章の差によって著者の嗜好がかいま見えて、そこがまた本書の魅力になっていると思います。



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