『論士歴問 大衆社会をこえていく綱渡り』西部邁

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 西部邁さんが、いろいろな方々と対談した内容が記載されている本です。

 個々の対談より、西部さんの「まえがき」と「あとがき」の方に価値があると思われる本です。というわけで、「まえがき」より引用です。




先達と付き合うには彼らの書物を読まねばならない。私なりにその営みを続けてきたつもりである。しかし、過去といい経験といい、活字では表わし尽せないなにものかが含まれていればこそ、一入の重みをもつのである。それを感得するのにいろいろの手立てがあるのだろうが、先達の身体を目の当たりにしてみるのも有効である。つまり、表情、声色、身振りなどに接するということである。そうすることに損失がないというのではない。想像の次元でせっかく色合ゆたかに膨らんでいた思いが、直接の対面のために、いささか単色な現実の次元にひきずりおろされるということがあるのかもしれない。しかし、その損失を覚悟で、社交の場に臨むのが生のやむをえざる任務なのではないか。そういう任務にともかくも取組まなければならない時期が人それぞれにあるものだと私は思う。



 本を読むだけでは分からないことというのは、確かにあるものだと思われます。本に感銘を受けても、会ってみるとがっかりすることもあれば、本はいまいちでも、会ってみると人格に感心したりとか、けっこうあるものなんですよね。

 社会が嫌いとか苦手という人がいるかと思いますが、やっぱり意図的に社会に臨むということは、少しは必要なのだと思われます。

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