本号で最も感銘を受けたのは、佐伯啓志さんの「「死」の意味づけを失った戦後日本」です。この論考では、まず生と死に関するアポリア(落とし穴)が示されています。このアポリアは、他の概念についても適用できることが語られているのですが、問題はこのアポリアを戦後の日本がほとんど意識できなくなったことにあるというのです。その後の論理展開が実に美事なので、是非読んでみてください。
2011年8月アーカイブ
本号で最も感銘を受けたのは、佐伯啓志さんの「「死」の意味づけを失った戦後日本」です。この論考では、まず生と死に関するアポリア(落とし穴)が示されています。このアポリアは、他の概念についても適用できることが語られているのですが、問題はこのアポリアを戦後の日本がほとんど意識できなくなったことにあるというのです。その後の論理展開が実に美事なので、是非読んでみてください。
『親鸞和讃集』(岩波文庫)を読みました。〈眞解脱は如来なり〉や、〈無常のことはりさとりつゝ〉など、深い言葉を見つけることができました。
江戸中期、信州松代藩の家老恩田木工の『日暮硯』(岩波文庫)を読みました。
作中の〈家業を疎かにする者は天下の大罪人なり〉という表現がおもしろかったです。
加来耕三さんの『加来耕三の感動する日本史』(ナツメ社)を読みました。
読みやすくて、すいすい進みました。空気投げの三船久蔵の話などがおもしろかったです。
藤井聡さんの『列島強靱化論 日本復活五カ年計画』(文春新書)を読みました。
まずは、「第一章 「巨大地震」は、すぐまた起こる」だけでも読んでください。これからの日本にとって、震災対策が急務であることが分かります。これだけの判断材料がありながら、「コンクリーとから人へ」というふざけた考えで防衛費を減らしてきたのですから、現代日本人は何を考えているのでしょうか。
本書で示されている危機意識と、その対処法は、これからの日本の大きな指針となるでしょう。列島の強靱化へと日本人が向かうことを期待します。
ちなみに、著者である藤井聡さんとは、二度ほどお酒のんでお話しさせていただいたことがあります。一度目は、九州発言者塾で講演に来た三次会です。二度目は、京都表現者塾の三次会です。私みたいな素人とも、真剣に意見を交わしていただきました。信頼できる人物です。これからの著作にも期待しています。
中野剛志さんの『国力とは何か』(講談社現代新書)を読みました。
中野剛志さんは、最近立て続けに本を出しておられますが、どれも素晴らしい内容です。大注目です。今後も、中野さんの単著は購入して読んでいくつもりです。
本書を読むと、今後のアメリカがやばいというのがよく分かります。日本は、戦略次第で未来が大きく変わりますね。本書で提示されている方向性は、基本的に賛同できます。問題は、この方向性を政府や国民が理解できるかどうかにかかっているのだと思います。今の政府や、その政府を選んだ国民のレベルを考えると、かなり不安になります。ですから、今後の日本に展望があるとすれば、まずは本書の論理レベルで議論できるところに立てるかどうかだと思うのです。
PS.
本書での国民国家の説明のところは、どうも納得できませんでした。国民国家とそれ以前の国家の違いの説明は、程度問題という気がします。近代になって国民国家が誕生したというのは、私には西洋的な思考における一種の神話に過ぎないと思われるのです。この点については、機会があれば煎じ詰めて論じていきたいと思います。