貨幣は内生説で説明しきれるか(2)

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 さて、貨幣について引き続き考えていきます。

 大雑把に言うと、次の三つがあると思われます。

(1)外生性:貨幣供給→貨幣需要
(2)内生性:貨幣供給←貨幣需要
(3)外生性かつ内生性:貨幣供給←→貨幣需要

 まず、ここでは(2)が成り立つことは自明とし、(1)が成り立つか成り立たないかという視点から考えていくことにします。そこで、ヘリコプター・マネー論について仮説を提示し、その検討を通して外生性の可能性を探っていきます。

【仮説1:ヘリコプター・マネー論による外生性について】

 貨幣の外生説を主張するマネタリストの中には、国民に直接に金を配るヘリコプター・マネー論を主張する人もいるようです。デフレを脱却して緩やかなインフレにしたいという現代日本において、国民一人当たりに云十万を配ればOKという意見もあるようです。
 この意見について、「原理性」・「効果性」・「有用性」の三点から考察してみることにします。
 まず「原理性」についてですが、ヘリコプター・マネー論は原理的に可能です。法律が問題となる場合は、合法的に法律を変えることで実施することができるようになります。「原理性」については、政治や法律の問題だと思われるので、内生説の理論によって実施させないことは不可能だと思われます。
 内生説の考え方からヘリコプター・マネー論を評価すると、「制度的にありえない」とか、「返済や利払いを求めない貸付はありえない」とかいう評価になります。しかし、これは実は批判になっていません。むしろ、内生説の理論からは実施できないが、外生説の理論からは実施できる。そして、原理的に実施できる。それゆえ、外生性は成り立つという論拠になってしまうように思えます。
 次の「効果性」ですが、ヘリコプター・マネー論を実施した際に、その効果が打ち消されて無効化されるか否かを考えてみます。内生説の理論からは、ヘリコプター・マネー論が想定されていませんから、内生説の効果によってヘリコプター・マネー論の効果が無効化されることはないように考えられます。よって、ヘリコプター・マネー論には、何らかの効果がみこまれます。ちなみに、効果が低いということと、効果が無効化されるということの区別は極めて重要ですよ。念のため。
 最後は「有用性」ですが、ヘリコプター・マネー論の効果の検討を通じ、実施すべきか否か、実施するならどの程度の規模ですべきかなどの検討が必要です。ですが、ここでは「有用性」の詳細は重要ではないので割愛します。
 以上のことから、ヘリコプター・マネー論は原理的に実施可能であり、何らかの効果が見込まれます。内生説ではなく外生説から論じることができるため、外生説が成り立つのではないかという疑問が浮かびます。

 さて、「内生説」を主張する方は、上記の論理に穴を指摘できるはずだと思います。間違いが分かる方は指摘をお願いします。

 

 さてさて、次回は、別の仮説から貨幣の外生性を検討していきます。

コメント(3)

はじめまして。コメントさせていただきます。

確かにヘリコプター・マネー論は原理的に実施可能です。しかし実施する場合、それは国民への直接給付という形は取らないと思います。具体的には減税(政府支出の増加でも可)を行いその資金を日銀の国債引受けによって賄うことになるでしょう。つまり実際にはヘリコプター・マネー論とは財政拡張政策になります。

ここで問題になるのは、外生説からヘリコプター・マネー論を考えると財政的な面は無視されて考えられるということです。さらに、外生説では単なる買いオペと高橋財政のような国債の日銀引き受けも無視しています。

つづいてヘリコプター・マネー論の効果についてですが、これは内生説・外生説の立場にかかわらず説明できます。結局、拡張財政に伴うポートフォリオ・リバランス効果が生じるかどうかという話になるので、それが生じれば有効だし生じなければ無効だということです。※

以上のことから、<ヘリコプター・マネー論は原理的に実施可能であり、何らかの効果が見込まれる>としても、それによって外生説の根本理論である「マネタリーベースを増加させればマネーサプライは増加する」を成り立たせることにはならないでしょう。


※ちなみに内生説の立場だとポートフォリオ・リバランス効果は財政政策の結果生じるものであって、金融政策のみによっては生じないとされています。

申し訳ございません。

説明不足でした。

まず、そもそも「内生説」と「外生説」の捉え方についてモトさんと僕とでは違いがあったようです。


「マネタリーベースを増加させればその乗数倍マネーサプライは増加する」という理論は「貨幣数量説」ではなく「貨幣乗数論」と言います。そしてこの「貨幣乗数論」は現代のマクロ経済学のテキストでは(好意的かどうかは別にして)必ず扱われています。有名なのだとマンキュー、スティグリッツ、クルーグマンですかね。つまり、「貨幣乗数論」というのは広く受け入れられた理論ではあります。

ですが、「貨幣乗数論」は銀行は受け取った資金のうち準備預金を除いた部分はすべて貸し出しあるいは証券購入に当てると仮定しています。ここでは信用需要の問題は無視されているわけです。

これに対して、銀行信用に着目し「銀行信用が貨幣を創造する」と主張するのが内生説です。ですから、内生説を主張する人にとっては、信用需要を無視した「貨幣乗数論」というのは外生説との根本的な違いになるわけです。「貨幣乗数論」という「MB→MSへの波及」は、「外生説の根本理論」というよりは内生説と外生説との根本の違いが生じている場所というのが適切ですね。※

※ただし、内生派は「貨幣乗数論」そのものを否定しているのではなく、「MB→MSへの波及」を否定しています。


以上を踏まえてヘリコプター・マネー論について述べたいと思います。

そもそもヘリコプター・マネー政策と言うのは、国民一人一人への直接給付もしくは減税を行い、そのコストとなる財源を日銀の国債引き受けによって賄うというものです。この政策内容に関しては外生説であれ内生説であれ同一の内容になります。

ではこの内容でヘリコプター・マネー政策が実施されると、それは拡張財政政策になります。ヘリコプター・マネー政策を主張するのは外生派ですが、外生派は拡張財政政策としてヘリコプター・マネーを主張しているわけではないんですね。

ポートフォリオ・リバランス効果というのは、「マネタリー・ベースが増大しても貸出は増加しない」という量的緩和政策に対する批判への答えとしてよく持ち出される理論です。具体的には「銀行の貸出が増加しなくても、銀行による証券保有の増加を通じてマネーサプライを増加させる」という理論です。証券保有の増加は現実では国債保有の増加になるので、その国債を発行する政府が必要になるわけです。そしてこのポートフォリオ・リバランス効果が実際に現れていたのが高橋財政のときで、逆に量的緩和政策の時期には生じていませんでした。


恐らくここまで書いても「ヘリコプター・マネー論による外生性」は結局否定出来ていないじゃないか、と思われると思います。それは、ヘリコプター・マネー政策が信用需要創出政策になる場合もあるからです。つまり赤字財政政策によって信用需要が創出されればポートフォリオ・リバランス効果は生じるしマネーサプライは増えるんですね。


以上ですが、、
自分の拙い言葉では全く伝わりませんよね。
丁寧に議論して頂いてるのに本当に申し訳ないです。

また疑問があればコメントください。

議論の参考としてこちらの本をどうぞ↓
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