貨幣は内生説で説明しきれるか(8)

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 カズさんが以下のコメントをしてくれています。

http://nihonshiki.sakura.ne.jp/nikki/2013/09/post-541.html#comment-98


 このコメントを基に、少し論じていきます。

> ただ、金融不安定性によって「MB→MSへの波及」が起きるとしたら
> その場合の波及経路はどうなるのでしょうか?

> その経路は重要だと思います。

 その通りですね。その経路は私も重要だと思います。
 そして、私が勝手に重要だと思っているのは、
 「経路は正しい理論からだけではなく、間違った盲信によっても発生する」ということです。
 我ながら、なかなかの名言(迷言)だと思う(笑)

 今現在の日本で投資が伸びていない理由は、
 大抵の日本国民が、
 信用貨幣における内生性の観点から考えて、
 異次元の金融緩和は効果が薄いことを理論的に理解しているためだ、
 というのはさすがに無理があるでしょう。

 それよりも、
 バブル崩壊や長期に及ぶデフレで慎重になっている大抵の日本国民は、
 異次元の金融緩和には多分経済効果があるのだろうけど、
 もうちょっと数字的に効果が現れてから投資などをしようと考えているからだ、
 というシナリオの方が妥当性が高いと思います。

 逆に、東大教授などの偉い先生方が言っている政策だし、
 それに異次元にやり続けるってんだからこれに乗り遅れると損をするなぁ、
 と考える人が多数派になるようでしたら、
 過剰期待により経済は(良いか悪いかは別として)大きく動くことが予想されるわけです。

 例えば、私が小学生だった1991年に日本のバブルは崩壊したわけですが、
 そのときニュースでやたらと「土地神話」という言葉が出てきたのですよね。
 要するに、日本の地価は絶対に下がらないという根拠のない盲信だったわけですが、
 その盲信をみんなが共有することによって経済に影響を与えることがありえるという話です。

 つまり、
 「経済学的に間違った政策によって、
 経済学的に正しい政策も(色々な意味で)否定されることがありえる」ということです。
 経済学という学問をすると、こういった視点が抜けていく人が出てくるのは、
 私にとっては不思議な現象なのですよね。
 (まあ、その理由についてもある程度説明できるわけですが)

 私は、経済においては「一見して意味のないパフォーマンスが大きな効果を発揮する」
 ということも重視しています。

 私が無条件に尊敬している人物って、
 全人類史という規模でもそんなに多くはないのですが、
 その内の一人に山田方谷がいます。

 山田方谷(1805~1877)は、幕末・明治前期の陽明学者であり経世家です。
 幕末期に、松山藩の財政整理と藩政改革に成功した人物です。

 山田方谷の藩政改革では、藩札の信用を回復するために、
 藩札を回収して一日かけて燃やすというパフォーマンスを行ったんですよね。

 このパフォーマンスの有無は、
 藩政改革の成果に大きな影響を及ぼしたと私は考えているわけです。

 

 

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